研究課題
これまでの研究では、2018年度には、細胞接着因子であるαVβ3インテグリンと血管新生を同時標的としたβ線放出核種Cu-64で標識したRaftRGDペプチド(64Cu-RaftRGD)と腫瘍内低酸素環境を標的とした64Cu-ATSMを組み合わせた新しい併用治療法のProof of Conceptを1種類の腫瘍モデルにおいて実証した。2019年度には、αVβ3インテグリン標的と低酸素領域標的RI内用療法の併用治療のrationaleを確立した。2020年度には、病態生理学的に異なった腫瘍群を呈したIGR-OV1腹膜転移モデルマウスに64Cu-RaftRGDの単独を投与し、治療評価を実施した。64Cu-RaftRGDの治療効果を確認した。一方、さらなる抗腫瘍効果を得るために、低酸素領域あるいはその密接に隣接組織を標的とするRI内用療法との併用の必要性がこの臨床的に関連するモデルにおいても示唆されている。そして今年度はαVβ3インテグリン標的RI内用療法剤と低酸素領域標的RI内用療法剤との併用治療戦略の一環として研究を続けていた。64Cu-ATSMの腫瘍細胞への集積は細胞株の種類によって異なるという報告もあったため、われわれは64Cu-ATSMの癌種普遍性について検討を行った。IGR-OV1卵巣癌腹膜転移モデルマウスにおいては、腫瘍組織内の64Cu-ATSMの集積領域(オートラジオグラフィーで示されたもの)が低酸素マーカーのピモニダゾールの染色部位と一致していないことが示された。この結果を受けて、低酸素領域を直接的または間接的に標的とすることができるペプチドベースのRI内用療法剤の開発検討に切り替えることにした。ペプチドを使用するメリットは、化学修飾により、さまざまなキレート剤を結合させて、用途の広い放射性標識を実現できることである。それについての検討が進行中である。
2: おおむね順調に進展している
腫瘍動物モデルの作製と実験に使用した試薬の準備が整っているため、当初の計画通りに研究が順調に進んでいると考えられる。また、海外学会(2021米国核医学・分子イメージング学会)でも発表することができた。さらに、Third Place Poster ー Oncology, Basic and Translational のAward Winnerを受賞した。
本課題の延長期間となる2022年度(令和4年度)は、研究目的をより精緻に達成するための研究の実施、すなわち必要に応じ追加実験の実施や学会参加、論文投稿などを行う予定である。
理由:新型コロナウイルス感染拡大防止のため、学会発表はオンラインで行われたので、当初予定した学会参加への旅費交通費を使用しなかったため。また、実験計画に多少変更が生じたため、当初予定した消耗品費の一部を使用しなかったため。使用計画:必要に応じ追加実験の実施や学会参加、論文投稿などを行う予定である。
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