研究課題
本年度はアルツハイマー病発症カスケードにおいて中核病変に位置付けられるタウ病変形成と神経炎症病態に着目し、ヒト変異型タウを過剰発現するrTg4510系統トランスジェニックマウス脳をモデルとして活用する事で、以下の2点に取り組んだ。1) タウ病変形成の早期検出蛍光蛋白質などレポーター分子を融合したタウ蛋白質の全長型や微小管結合領域の発現を可能とするウイルスベクターを作製し、初代培養神経細胞やマウス大脳皮質に遺伝子導入する事でライブセルイメージングや二光子顕微鏡による生体脳イメージングが実現された。現段階で野生型タウ蛋白質の過剰発現による病変形成は認められていないが、凝集促進変異の導入やレポーター分子の性能改良を進めながら早期検出の可能性を引き続き検討している。一方、浮遊切片による脳組織染色法と共焦点顕微鏡観察を組み合わせる事で、従来の解析法と比較してタウ病態を高感度かつ高精細に画像解析する方法も確立され、生体イメージングにより得られた所見の裏付けを得る為に活用できる見込みもついた。2) 炎症性アストロサイトの画像評価神経炎症病態で重要な役割を果たすアストロサイト活性化を可視化するための標的分子を探索し、従来より汎用されるGFAP以外に複数の有望な候補分子が見出された。また、モデルマウス大脳皮質表層にアデノ随伴ウイルスベクターを局所注入する方法にて、GFAPプロモーター依存的にアストロサイトへのレポーター蛋白質の遺伝子導入が可能となり、炎症性アストロサイトの形態変化やカルシウム動態変化の生体脳イメージング評価に着手した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、アデノ随伴ウイルスベクター構築やレポーター分子開発は進んでおり、タウ蛋白質の動態解析やアストロサイト生理機能の生体脳イメージングが実現された事で、rTg4510脳におけるモデル病態の早期検出に向けた技術基盤が着実に構築された。炎症性アストロサイトの画像評価に向けた候補分子マーカー探索においても新しい知見が蓄積されてきており、同細胞を標的とした炎症病態評価に向けて今後の新しい展開も期待される。
次年度は、これまでに確立された生体脳イメージングによる評価を進めながら、タウ病変と関連する新しい標的分子の探索や新規バイオセンサー技術の開発も積極的に推進し、モデル動物脳の疾患病態を早期検出し得る可能性を引き続き検証する。ポジトロン断層法(PET)やMRIを含むマルチモーダルな視点からの早期検出の可能性は未だ検討段階ではあるが、蛍光イメージングとの併用が可能なレポーター分子の導入も進めながら可能性を模索する。
【次年度使用額が生じた理由】当初は本年度に計画していた動物実験に関し、更なる詳細な追加検証が必要性が生じたため。【使用計画】次年度計画に組み込み改めて使用する。
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Genes & Development
巻: 33 ページ: 365~376
10.1101/gad.320077.118