放射免疫療法 (Radioimmunotherapy;RIT)は、がん細胞に高発現している抗原に対する抗体に治療用のラジオアイソトープ(RI)を標識し体内に投与する放線 治療法であり、高い抗腫瘍効果を示す。しかしながら標的分子である抗原は多くの場合正常細胞にも発現しており、これらに対する副作用が懸念される。がん細 胞だけを認識することができる抗体を用いれば、正常細胞への副作用を抑えることができ、その分治療抗体を大量に投与することが可能になり、高い治療効果が 期待できる。本研究では、複数の難治性固形がんで高発現していることが知られているポドプラニンに対するがん特異的抗体(CasMab)を治療用RIで標識し、腫瘍モデル動物での体内動態、治療効果、副作用を評価し、CasMabを用いたRITの有用性を示す。 当該年度は、前年度に検討した新規抗ポドプラニン抗体をα線放出核種であるAc-225で標識し、α線によるRITの効果を検証した。抗ポドプラニン抗体をAc-225で標識し、ポドプラニンを高発現している培養細胞への結合性を調べたところ、In-111で標識した時と同程度の結合性であった。担癌マウスでの治療実験でのRI投与量を決定するため、In-111で標識した本抗体の体内動態のデータより、腫瘍や臓器へのAc-225の集積を推定し、腫瘍における吸収線量がY-90と同程度になるような投与量を決定した。決定したRI量のAc-225標識抗体を担癌マウスに投与し、治療効果を検証した。Ac-225標識抗体を投与したマウスでは、重篤な体重減少なく腫瘍体積の著しい減少がみられた。Y-90標識抗体を投与したマウス群では、投与後28日以降に腫瘍の再増殖が見られたが、Ac-225標識抗体を投与した群では、観察期間中の再増殖は見られなかった。
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