研究課題
アルツハイマー病(AD)は最も一般的な進行性変性認知症である。ADは、細胞外アミロイドβ(Aβ)および細胞内神経原線維変化(NFT)の異常な蓄積を特徴とし、これはシナプス破壊およびその後の神経細胞死に関連する。18F-THK5351はタウ病理とMAO-B陽性星状神経膠症の組み合わせを反映しており、脳内の神経炎症を検出するための有望なバイオマーカと考えられている。健忘性の軽度認知障害5人と早期AD患者13人の計18人をADスペクトル患者群とした。これらの患者は11C-PIB PET画像の視覚的評価によって陽性であった。患者群は70.3±8.5歳(平均±標準偏差)であり、MMSEスコアは22.6±4.1であり、CDRは0.5および1.0である。対照として、正常な認知機能を有する35人の健康な日本人(Cognitively Normal; CN群)を募集した。年齢は66.4±8.6歳であり、平均MMSEスコアは29.3±1.0、CDRは0であった。MRIによる拡散テンソル画像による構造的結合性は大脳全体のタウ沈着と相関し、CN群では脳梁、下前頭後頭束、帯状回、皮質脊髄路、内側毛帯、および上小脳脚 / 中小脳脚の結合性の有意の増加を示した。 ADスペクトル群では、下前頭後頭束、皮質脊髄路、および中小脳脚の結合性の有意の低下を示した。拡散MRIコネクトメトリーは、大脳全体においてタウ沈着の増加を伴うアミロイド陰性CN群において有意に増加した結合性を検出したが、アミロイド陽性ADスペクトル群においては減少した結合性として検出された。 低タウ沈着は、早期のニューロン損傷または正常な加齢に伴う慢性炎症に対する代償性反応を誘導するように思われるが、アミロイドおよび高タウの共存は、減少した結合性をもたらす代償的効果を上回ると思われる。
2: おおむね順調に進展している
今回はMRIによる拡散テンソル画像の中で構造的結合性を解析する目的で拡散MRIコネクトメトリーという手法を用いた。この方法は、従来の拡散テンソル画像の解析で欠点といわれていた線維が交叉する部位でも結合の方向性を評価することができる。大脳全体においてタウ沈着の増加を伴うアミロイド陰性CN群において有意に増加した結合性を検出したが、アミロイド陽性ADスペクトル群においては減少した結合性として検出された。 低タウ沈着は、早期のニューロン損傷または正常な加齢に伴う慢性炎症に対する代償性反応を誘導するように思われるが、アミロイドおよび高タウの共存は、減少した結合性をもたらす代償的効果を上回り、結合性を低下させることが判明した。解析にはMatlab上で作動するDSI studioを用いた。T1強調画像を用いたネットワーク解析に関しては、Graph Analysis Toolboxを用いるPC環境を整備した。
T1強調画像を用いたネットワーク解析に関して、グループ解析のみならず、個々の被験者の構造ネットワークを評価可能な解析法を導入する。T1強調画像のネイティブスペース灰白質セグメンテーションから皮質内類似性に基づいてネットワーク情報を抽出する。節点は脳領域の小さな関心領域(3×3×3ボクセル立方体として定義される)を表し、連結性はピアソンの相関で定量化されたGM密度値の類似性に基づく。次に、各ノードを45°の倍数でθ角度だけ回転させ、すべての軸にわたって反射させて、ターゲットノードとの最大類似度を特定する。それらの相関値の有意性が無作為置換法に基づく多重検定のために補正されたp <0.05の被験者特異的閾値を超えたときに脳領域を接続することによってGM類似性マトリックスを構築する。得られたネットワークを2値化し、次の4つのローカルネットワーク指数を計算する:次数(ノードのエッジ数)、クラスタリング係数(隣接ノードの相互接続性のレベル)、特定経路長(2つのノード間の最短距離)、および媒介中心性(ノードを通る最短パスの割合)。ボクセルレベルで各被験者のローカルネットワーク測定値を比較するために、標準MNI空間のスライスされたGMに重ね合わせて対応する画像を作成する。
今年度はアミロイドPETで既に陰性か陽性が判定されている被験者にタウPETを行ったため、PETトレーサの合成費用が少なく抑えられた。また、フリーのソフトウェアを主に使用したため解析費用が抑えられた。次年度は、T1強調画像から個人脳の複数の構造ネットワークパラメータ画像を作成するためのソフトウェアおよびそのプログラム開発の費用が発生する。また、より多数例でのアミロイドPETとタウPETのトレーサ合成費用が発生する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Brain Behav
巻: 8 ページ: e01145
10.1002/brb3.1145
Front in Aging Neurosci
巻: 10 ページ: 223
10.3389/fnagi.2018.00223