研究課題/領域番号 |
18K07781
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本多 昌平 北海道大学, 大学病院, 講師 (90588089)
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研究分担者 |
北河 徳彦 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医長 (00585135)
鈴木 拓 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20381254)
荒 桃子 北海道大学, 大学病院, 医員 (30741219)
田中 祐吉 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 臨床研究所長 (50420691)
宮城 久之 旭川医科大学, 医学部, 助教 (50596442)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝芽腫 / HCC/stemlike subtype / miRNA発現異常 / DNAメチル化異常 |
研究実績の概要 |
【研究の目的】肝芽腫は稀少癌であり解析対象とする検体を十分に得られないことから、これまでの肝芽腫研究を更に発展させるために症例数の多いHCC/stemlike subtypeを新たに解析対象に加え、肝発生過程からの逸脱と正常肝細胞からの脱分化に働く共通分子メカニズムに着目し、①DNAメチル化・miRNA発現異常に基づく分子診断による個別化治療の確立、および②miRNA発現制御による肝芽腫の進展抑制を目標とした新規治療法の開発を今後の肝芽腫研究の目標としている。 【研究の成果】 1.進行肝芽腫およびHCC/stemlike subtypeに共通する分子メカニズムの同定 当施設において切除されたHCCの中からMoc-31,AFP,CK19免疫染色によりstemlike subtype症例として4症例を抽出し、それぞれの腫瘍部・正常肝部から選別して抽出したRNAを用いてGeneChip® miRNA4.0 ArrayによるmiRNA発現プロファイリングを施行した。14q32領域クラスター遺伝子の有意な発現上昇は認められず、進行肝芽腫において認められた現象とは異なる結果であった。現在Qlucore omics explorerを用いて新規の共通分子メカニズムを同定すべく解析をおこなっている。 2.validation cohortを用いた新規予後予測パネルの作成 日本小児肝がんスタディーグループより供与された肝芽腫60症例に対し7つの遺伝子につき、バイサルファイトパイロシークエンシング解析によるメチル化解析をおこなった。test setと統合した解析において、メチル化遺伝子が3個以上であることが独立した予後不良因子として同定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HCC/stemlike subtypeに関して4症例の解析を終え、これまでに解析した肝芽腫サンプルを用いた遺伝子プロファイリングと比較照合することで共通した分子機構異常を明らかにしようとしている。症例数が少ないためか当初ターゲットに想定していた分子異常は同定されなかった。クラスターとして発現上昇しているmiRNAのうち肺転移巣において最も高値であった(miR-493-3p, miR-431-5p, miR-432-5p, miR-487b-3p, miR-487a-3p)の発現レベルをqPCR解析し、ある一定の発現上昇傾向を認めた。 パイロシークエンサーによる予後予測分子マーカーパネルの作成については当初の予定通りの成果を得ることができた。validation cohortを用いた解析を終了し、先行研究によって得られたtest setにおける結果とほぼ同等であり、total sample cohortを用いた具体的なcut off値の設定をおこない、今後臨床実用化に向けて前向き研究に組み入れることを検討している。 肝芽腫細胞株を用いたin vitro解析に関し新規候補遺伝子として同定したNDRG2のknock-down、over expression株を作成し機能評価を現在おこなっている。CRSPPR-Cas9システムによるknock-out株の作成に挑んだが樹立することができず、siRNAによるknock-down株を使用する予定である。増殖能においてがん抑制的に働く傾向が示されており、肝芽腫細胞株における機能解析を継続し進めていく。 肝芽腫xenograftモデルの作成は研究分担者(北河)の共同研究チームにおいて肺転移組織を用いたxenograft形成に成功しており、将来的なin vivo機能解析に応用可能と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において最も成果として期待できるDNAメチル化異常に基づく予後予測分子マーカーパネルの作成は解析データのクリーニングと詳細な統計解析をおこなうことで現実的に臨床応用可能と考えており、目下論文作成をおこなっているところである。 当初予定していた肝芽腫xenograftモデルを用いたin vivo機能解析に関しては、非常に稀な肝芽腫の発生を予測することができず生標本処理によるモデル作成が困難であったが、肺転移組織を用いたxenograft作成ができたため、今後のin vivo解析に使用可能と考えている。これまでに蓄積してきた肝芽腫の分子プロファイルと本研究にて得られたHCC/stemlike subtypeの分子プロファイルを基に、Qlucore omics explorerを用いたin silico解析を用いて、進行肝芽腫およびHCC/stemlike subtypeに共通する分子メカニズムの同定を進めていく。 上記の研究成果を日本癌学会および日本小児外科学会にて報告し、また論文による成果発表をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により共同研究者施設(神奈川県)への訪問ができず、更に学会中止のため成果発表をおこなうことができなかったため、本研究によって得られた解析結果の集約と報告を次年度におこなうこととした。更にはin silico解析を詳細におこなうことによって更なる知見を得ることを目標とし、研究期間の延長をおこなった。
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