研究課題/領域番号 |
18K07783
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松嵜 葉子 山形大学, 医学部, 准教授 (00292417)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インフルエンザ / 呼吸器感染症 |
研究実績の概要 |
令和元年度の研究で次のような実績を得た。 1.2018年に山形県で流行したC型インフルエンザ43株の詳細な抗原解析と遺伝子解析を実施した。その結果、新たに加えた単クローン抗体(YA3) によって、サンパウロ系統の中の2つのサブグループに分けることができた。Aichi99 sublineageとVictoria2012 sublineageと名付け、それぞれ20株と23株が占めた。YA3の反応性の違いは、HE蛋白の190番目のアミノ酸がリシン(K)からアスパラギン(N)に変わることによって生じることをすでに明らかにしていたが、その裏付けを得ることができた。190番目は中和エピトープの中にあることが判明しており、この変異によって流行が拡大した可能性が示唆された(論文発表)。 2.2019年には海外からC型インフルエンザの報告が相次いであった。いずれも4歳未満の乳幼児だった。山形県の分離株と同様にサンパウロ系統の2つのサブグループに分かれ、この2つのサブグループがglobalに広がっていること、190番目のアミノ酸変異による抗原変化が広がりに関与している可能性が示唆された(論文発表)。このうち3例は肺炎等による入院例だったが、3例ともVictoria2012 sublineageが検出されており、2つのサブグループで病原性に差がある可能性が示唆された。 3.隔年流行と抗体保有率の関連を明らかにする目的で、山形県住民のC型インフルエンザウイルスに対する抗体保有調査を実施した。平成30年度(2018年)の結果と比較すると、20代以降の年齢層でサンパウロ系統株よりも神奈川系統株に対する抗体保有率が高い傾向が見られた。これは、2001年に観察された成人による優位な抗原グループ(系統株)の置き換わりと同じ現象をとらえている可能性があり、来年以降の流行株が注目される結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究実施計画について、実績概要に記したような成果を出すことができた。 流行拡大と重症化の要因としての抗原変異を、立体構造モデルから解析ができるようになり、論文発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.重症化要因として「抗原変異」「重複感染」「2歳未満の低年齢」の3つに絞り、C型インフルエンザ感染者の解析をする予定である。 2.令和元年度の抗体保有調査で、20代以降での神奈川系統株に対する抗体保有率の上昇がみられ、来季以降に小児の間で神奈川系統株の流行が発生する可能性が示唆された。免疫による選択圧が隔年流行に影響していることを実証することにもなるため、引き続き、抗体保有調査を実施する。 3.成人での再感染率を推測する。目的は、成人での再感染が免疫による選択圧に関与し、小児におけるC型インフルエンザの流行に影響するという予測を裏付けるためである。方法は、職員検診で半年ごとに採取され同意を得て保管した血清を用いて、C型インフルエンザの抗体価を測定する。4倍以上の抗体上昇があった時点で再感染があったと判断し、その率を算定する。すでにヒトメタニューモウイルスで実施しており、異なるウイルスとの比較も可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも物品の購入を抑えたため、繰越金が生じた。繰り越した額は、令和2年度実施予定の研究の試薬消耗品として使用する予定である。
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