研究課題
H30年度は、まずCDKL5欠損マウスに対するCDKL5遺伝子補充治療に使用するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの作製を行った。導入するヒトCDKL5遺伝子のtranscriptは、脳で最もdominantに発現するhCDKL5_1とした。連携研究者村松らにより、ニューロン特異的Synapsin I (SynI)プロモーターに続き、C末端側に3x FLAGタグを付けたhCDKL5_1、SV40 poly-A配列、AAV3ゲノムのinverted terminal repeatsからなる発現カセットを含むAAVベクタープラスミドが作製された。アデニン 1337をチミジンに置換して446位にチロシンからフェニルアラニンへのアミノ酸変化を導入して、AAV9 vp cDNAを合成した。AAVベクターは、ベクタープラスミド、AAV3rep、AAV9VP、およびアデノウイルスヘルパープラスミドpHelperを用いてHEK293細胞へのトランスフェクションによって産生した。2回の塩化セシウム平衡密度勾配遠心分離によって組み換えウイルスを精製し、ウイルス力価を定量的PCRによって決定した。次に、精製したAAVベクターがCDKL5組換え蛋白を発現することを、in vitro細胞系で検証した。マウス神経芽細胞腫由来のNeuro 2a細胞をLab-Tek II 8-well chamber slideで培養し、培養2日目に、AAVベクターを投与し、4日間の培養後に4% paraformaldehyde固定し、FLAG抗体及びCDKL5抗体を用いて二重免疫染色を行った。並行して、感染Neuro 2a細胞のlysatesを作製し、FLAG抗体及びCDKL5抗体を用いたwestern blottingを行い、組換えCDKL5の発現を確認した。更にAAVベクターの検証と並行して、新生仔マウス脳室へのAAV投与実験のための準備を行った。
3: やや遅れている
組換えCDKL5蛋白発現用のアデノ随伴ウイルスベクターの作製に時間がかかったため、今年度はin vitroにおける組換え蛋白発現確認実験までが終了し、マウス脳への感染実験は次年度に行う事になった。
まず日齢3~4日の新生仔マウス脳室へのAAVベクター投与法の技術の習熟を行い、引き続き、組換えCDKL5蛋白発現AAVベクターを投与後、2~4週でマウス脳を固定し、免疫染色、western blottingで、組換えCDKL5の発現細胞の局在と蛋白定量を行う。十分な発現を確認後、ネガティブコントロール投与群と組換えCDKL5蛋白発現AAVベクター投与群のCdkl5 KOマウス個体を作製し、投与1ヶ月後の、細胞生物学的、易痙攣性、行動等の表現型解析に進む。
AAVベクター作製に時間がかかったため、マウス脳へのAAVベクター投与実験の開始が年度末になり、in vivo実験用のマウス、試薬の購入額が予定より少なくなった。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0196587
10.1371/journal.pone.0196587