研究課題
基礎疾患別にサイトカインプロファイルを比較検討した結果、全身型若年性特発性関節炎(s-JIA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、川崎病(KD)、若年性皮膚筋炎(JDM)のいずれにおいても、MAS合併時には有意に血清neopterin値が上昇しており、IFN-γの過剰産生が共通して認められることを明らかにした(EULAR2019において発表、現在投稿中)。s-JIAに合併するMAS症例において、その診断マーカーとして、neopterin, IL-18, sTNFR-II, ferritin値のどれが最も有用であるか比較検討した結果、neopterin値が最も有用であることを明らかにした(Takakuwa M et al. Clinical Immunol 2020)。またトシリズマブ治療中に発症したMASの診断マーカーとしては、sTNFR-II/I比が最も有用であることを明らかにした(Irabu H et al. Pediatr Res 2020)。また抗体アレイ解析によりSLEに合併したMASではIFNγおよびTNFαの過剰産生が病態に深く関与し、CXCL-6値が有用な診断マーカーとなることを明らかにした(Usami M et al. Clin Immunol 2020)。さらに病勢コントロールの不良な成人スティル病の母体から出生したMASの新生児例についてサイトカインプロファイル解析を行い、母体と同様新生児においても、血清IL-18値の異常高値を認め、母体から児に移行したIL-18がMASの発症に深く関与していることを明らかにした(Shimizu M et al. Clin Immunol 2019)。またMASのモデルマウスの作成については浸透圧ポンプを用いてIL-18の持続投与を行い、CpG投与ことで、MASを発症させることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は当初予定していたIL-6トランスジェニックマウス(IL-6Tg)へリポポリサッカライド(LPS)を反復投与することによりMASを発症するマウスモデルの作成を試みていたが、残念ながらいずれも胎生致死となったため、大幅に予定が遅れてしまったが、新たなモデルとしてB6マウスに浸透圧ポンプを用いてIL-18またはIL-6の持続投与を行い、CpG投与によりMASを発症するモデルマウスの作成を試み、MASを発症させることに成功できた。このマウスを用いての実験は順調に進行しており、今までのところ、MASの重症度は濃度依存性であることが明らかになるとともに、IL-6とIL-18はそれぞれ独立してMASの病態に関与していることが判明している。
確立したモデルマウスを用いて、免疫学的パラメーターの解析を進めるとともに、IL-6刺激、IL-18刺激で共通して上昇しているIFNγの遮断治療の効果を確認したい。
当初計画していたモデルマウスは胎生致死となったため、研究の進捗に遅れが生じたが、今年度新たに浸透圧ポンプを用いたモデルを確立できた。次年度はこの新しいモデルマウスを用いて予定していた免疫学的解析および治療応用に向けた実験を行う予定であり、繰越した助成金を使用して実験を遂行していく予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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