研究実績の概要 |
小児難病に伴う精神遅滞の分子病態を解明し、治療策に結びつけるために本研究を行っている。小児期には、学習能力や可塑性・成長能力など、成人期にはない多様な生理的特徴がある。 そのような能力を実現している分子メカニズムの解明を目的として、モデル動物であるマウスにおいて、各種の臓器で網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、小児期に高発現している遺伝子群を同定し、若年性遺伝子 (juvenility-associated genes, JAGs)として報告した (Jam et al., Scientific Reports, 2018)。若年性遺伝子には、細胞増殖や核酸合成に関わるもののほか、多彩な遺伝子群が含まれることが判明した。 解析対象をタンパク質をコードしないロング・ノンコーディングRNA (lncRNA)に広げた。解析の結果、小児期に高発現するlncRNAを若年性リンクRNA (juvenility-associated lncRNA, Jalncs)として報告した (Tano et al., Journal of Cell Science, 2019)。若年性リンクRNAの1つGm14230は、若年期の細胞において高発現しており、siRNAを用いて発現を低下させると、細胞は早期老化を来した。この結果は、若年性遺伝子であるGm14230が、小児期の細胞において早期老化を阻止する役割を果たしていることを示唆した。
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