研究課題/領域番号 |
18K07788
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
森 雅樹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (10602625)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 若年性遺伝子 / TBC1D24 / Cytoophidia / 細胞内マクロ構造 / 同化 / 酵素活性 |
研究実績の概要 |
多くの小児難病に伴い精神遅滞が生じ、患者・家族の負担が増大するが、重篤な脳機能障害への手立ては少ない。私は小児科医としての動機付けから、この問題の解決を目指し、脳機能を回復させる筋道として、大人にはなく子供にしかない特性 (若年特性) に着眼した。そのような若年特性として、小児脳では神経細胞が活発な『代謝能』や『細胞増殖能』『細胞遊走能』を示すが、それらの治療応用性は十分に検証されていない。 本研究では、小児脳の若年特性の分子基盤を解明し、精神遅滞を伴う小児脳難病の治療法の開発に取り組み、マウス大脳皮質で網羅的遺伝子解析を行い、小児脳に特異的に発現する遺伝子として「若年性遺伝子」を同定した。神経の遊走や生存に関わる遺伝子を絞り込んだ結果、Tbc1d24に着目した。超解像度顕微鏡による観察の結果、Tbc1d24は新規の細胞内構造体であるCytoophidiaを形成することがわかった。Cytoophidiaは代謝酵素であるGTPaseとして機能するTbc1d24の活性調節機構であり、小児の神経細胞の成長過程において、神経線維の伸長や神経前駆細胞の増殖において必須の役割を果たすことが明らかとなった。Tbc1d24が形成するCytoophidiaは細胞の内部状態によって調節されている。若年期の細胞は、増殖性・分化能・同化代謝能によって構成される細胞若年性をもつ。Tbc1d24の形成は細胞の若年性の喪失に伴って増加する。以上のことから、Tbc1d24は若年性遺伝子として成長発達期の神経細胞に高発現しており、その活性は細胞内マクロ構造体であるCytoophidiaの形成を通して調節されている。本知見について、国際学術誌を通して発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
得られた知見に基づく神経難病の治療モデルを計画していたが、コロナ禍の影響で遅延が生じている。遅れを最小限にするため、得られた研究成果については、すでに国際学術誌での発表を行った。治療モデルについて、継続的に整備を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
解析対象とする動物モデルの整備を進め、令和3年度中に計画内容を完遂する。てんかん性脳症の患者で同定されたTbc1d24の遺伝子変異をもとに遺伝子異常がどのような機序でCytoophidia形成に影響するかを解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において計画遂行に遅延が生じた。 遅延が生じているマウス疾患治療モデルについて、遺伝子解析および試薬購入のための物品費として使用予定である。
|