本研究では、小児慢性疲労症候群と注意欠如・多動症に共通する中核症状に焦点を当て、臨床現場と教育現場からの要望度の高い、短期的治療効果でなく、中長期的な治療効果判定法の開発を試みる。磁気共鳴画像法(MRI)や機能的MRIの方法論を駆使し、これらの中核症状関連脳部位の神経活性度、安静時脳活動パターンおよび各脳領域の体積量などといった多様な脳機能・形態情報を両疾患患児から収集し、各種治療により変化するこれらの脳機能・形態評価と臨床的重症度に基づき、治療中断・終了過程も含む数か月間の治療効果を検証することで、神経科学に立脚した小児・思春期疾患患児の中長期的な治療法の確立を目指す。令和2年度は、米国のHuman Connectome Projectに準じた脳構造情報および脳機能情報に関するMRI撮像プロトコルを用いて、小児慢性疲労症候群患児と注意欠如・多動症患児の脳構造・脳機能MRIデータの集積のデータ解析を行った。小児慢性疲労症候群と注意欠如・多動症における幾つかの症例においては、治療経過とともに、疲労症状が緩和されていることを確認したが、治療効果と脳構造・脳機能変化との関連性については一様の傾向を見出すことが困難であった。本結果については、新型コロナウイルス感染症の拡大状況なども影響し、十分な解析サンプルの集積ができなかったことが一因と考察する。本基盤研究は一旦終了となるが、今後、さらにデータ集積を図り、治療効果と脳構造・脳機能の関連性を検証していく予定である。
|