研究課題/領域番号 |
18K07795
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
岩田 幸子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40465711)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新生児 / 副腎皮質 / 発達 / 認知機能 / 下垂体 / 視床 |
研究実績の概要 |
本研究では,在胎週数に比して体格が小さいSmall for gestational age(SGA)児を対象に,胎内発育遅延でプログラミングされた視床下部‐下垂体‐ 副腎(HPA)系が,生後,特異的制御過程を経ること,および,その結果,脳神経系に及ぼす影響を,MRI画像を用いて解析することを目的としている. 症例は,研究代表者の研究チームである久留米大学病院の新生児集中治療室(NICU)に入院管理した新生児で,予定した70症例のリクルートを終えている.対象は早産児を含む幅広い在胎週数で,その内,SGA児が3割を占める.出生時から入院中に経時的に採取した,ステロイドプロファイリングの結果論文は,初年度に報告済である. 本年度は,退院時に撮影した脳MRIの解析を進めた.髄鞘化進展の指標であるFA値は,脳梁膨大部および膝部において,早産児は,成熟児より有意に低く,成熟遅延が示唆された.一方,早産児の内,SGA児は,Appropriate for gestational age(AGA)児に比較し,脳梁膨大部および膝部のFA値が有意に高値で,過成熟の状態と考えられた.これは,SGA児のHPA系が,胎内から生後に引き継がれる亢進状態を反映している可能性がある.今後,フォローアップ症例から,新生児期の神経過成熟がその後の発達に及ぼす影響について検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例リクルートメントを終え,退院時MRIの解析をまとめた.研究実績で示したMRIの結果は,論文執筆を完了し,投稿準備を進めている.NICU退院児の発達フォローは継続中である.今後,新生児期に認められた神経系過成長が遠隔期での発達に及ぼす影響を検討予定である. コルチゾールに加えて,新規に解析を行ったメラトニン代謝産物(6-sulphatoxy melatonin)の生後経時変化および体動周期ロガー(アクチグラフ)の観察結果についても,現在論文作成を進めている.(これは,元々,SGA児に対するHPA系の関与を考察する研究から一歩踏み込んで,視交叉上核―松果体―末梢性体内時計の制御に,AGA児とSGA児との差異があるかどうかの問いに端を発している.来年度も引き続き,症例リクルートを予定している.)
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今後の研究の推進方策 |
久留米大学病院症例におけるフォローアップを完遂させ,新生児期のステロイドプロファイリングと,遠隔期の神経学的評価の対比の解析が最重要課題である. メラトニン代謝産物・アクチグラフによる睡眠リズム形成過程の解明に加え,近赤外線トポグラフィを新規に導入し,内分泌環境がSGA児の発達に与える影響をより高度な脳機能の観点から解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
名古屋市立大学における発展型研究を進めるため,消耗品(尿・唾液採取キットおよびアッセイキット)の購入を行う予定である.また,久留米大学・名古屋市立大学双方のチームからのデータ解析や英論文投稿にかかる費用を引き続き支出する.学術集会発信および名古屋・久留米チームのミーティングを実施するため,必要な最低限の旅費を計上する.
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