研究課題/領域番号 |
18K07797
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
秋岡 親司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60598093)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオマーカー探索 |
研究実績の概要 |
若年性特発性関節炎の乾癬性関節炎型および付着部炎関連関節炎型の半数は、血清C反応性タンパク値(CRP)が上昇しないため、炎症性疾患が疑われず、診断に至らない例が多い。一方、TNF-alphaおよびIL-17に対する抗体療法が有効であることから、これらの炎症病態にはTNF-alphaおよびIL-17が関与すると考えられる。それらを根拠に、若年性特発性関節炎の乾癬性関節炎型および付着部炎関連関節炎型患者血清にはTNF-alphaおよびIL-17の発現に関する分子が存在するとの仮説を立て、それら分子の探索を行っている。 平成30年度に遺伝子編集の技術を用いて確立した、内因性のTNF-alpha遺伝子発現を検出するレポーター(ルシフェリン)遺伝子ノックインヒト単球細胞株HL-60を用い、血清CRP陰性の患者由来血清のレポーター発現を、in vitro cell cultureシステムで調べた。血清によるレポーター発現は、予想に反してHL-60の内因性発現を有意に抑制した。しかしこの抑制はCRP陰性血清に特異的では無く、バイオマーカー探索の目的には合致しない結果であった。一方、血清からフォスファチジルセリン親和性を利用してマグネティックビーズを用いて抽出したエキソソームは、レポーター発現を特異的に変化させた。このことは患者血清由来エキソソーム中に単球等の細胞におけるTNF-alpha遺伝子発現を転写・翻訳レベルで特異的に変化させる分子の存在を示唆した。現在、その分子の探索を行うとともに、バイオマーカー候補の選定を網羅的に検索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL-17A遺伝子座におけるレポーター(ルシフェラーゼ)遺伝子のノックイン細胞株の樹立が困難であり、現行で結果を得たTNF-alpha遺伝子発現誘導を基準に、病態に関与する分子バイオマーカーの選定を進めている。選択基準をTNF-alpha遺伝子発現に限定したため、候補分子の選定に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きIL-17遺伝子発現誘導系評価のための細胞株樹立を行うが、まずは、TNF-alpha遺伝子発現誘導を基準とした病態に関与する分子およびバイオマーカーの選定を進める。当初の予定通り、蛋白およびmRNA、miRNA等の核酸のプロファイルを作成し、網羅的解析により特異的分子を絞り込む。ただし、解析方法の複雑さから、mRNAおよびmiRNAを優先して解析する。その上で、選ばれた候補分子について多数検体で検定し、ROCカーブを用いてバイオマーカーとして有用か否かを判断する。今年度末までに最低でも1つ以上の有意分子を決定したい。
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