研究課題/領域番号 |
18K07798
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
矢田 弘史 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30635785)
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研究分担者 |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血友病A / インヒビター / 分子異常症 |
研究実績の概要 |
中等症・軽症血友病A患者の有する異常FVIIIの原因となるFVIII遺伝子変異については、ダイレクトシーケンス法による全エクソン領域における遺伝子解析に加えて、MLPA法及びLong-PCR法を駆使して、検索を進めた。結果、中等症血友病Aの兄弟2例において、エクソン領域には変異がみられず、重複・欠失もみられなかったが、Long-PCR法によって、一般には重症型を呈すると考えられる遺伝子構造変異の存在が示唆された。一方、FVIIaを用いた中等症・軽症血友病Aの異常FVIII特性に基づく新規個別化治療戦略として、FVIIaによるTF依存的FVIII活性化反応機序に関する検討を行った。全長型FVIIIとBドメイン除去型FVIIIとで比較検討し、また、トロンビンによるFVIIIの活性化(・不活化)に重要なアミノ酸残基である、Arg372及びArg336を他のアミノ酸残基に置換したFVIII変異体を発現し、FVIIaによるTF依存的FVIII活性化反応における影響を検討した。それらの成果を第40回日本血栓止血学会学術集会及び第61回米国血液学会にて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に、FVIIaを用いた中等症・軽症血友病Aの異常FVIII特性に基づく新規個別化治療戦略について実験を進めた。Bドメイン除去型FVIIIにおいても、全長型FVIIIと同様にFVIIa/TFにより活性化が生じるが、Bドメイン除去型FVIIIでは、全長型FVIIIに比べて、不活化反応が抑制され、より長時間、凝固活性が保持されることがわかった。また、全長型FVIIIにおけるFVIIa/TFによる活性化反応では、Arg372→Arg336の順に開裂が起こるのに対し、Bドメイン除去型FVIIIでは、Arg336が先に開裂することで活性化がおこることを、凝固一段法及びWestern blot法により証明した。さらに、発現実験により得たBドメイン除去型FVIII変異体であるArg372AlaとArg336Alaを比較すると、いずれの変異体も、FVIIa/TFにより野生型FVIIIと同様に活性化され、Arg336でもFVIII活性化反応が生じ得ることを証明した。一方、FVIIa/TFによる活性化後の不活化反応は、Bドメイン存在時には、A2解離が主たる機序であるが、Bドメイン除去型FVIIIでは、Arg372開裂よりもArg336開裂が先行するためにA2解離が起こりにくく、結果として不活化抑制が起こると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画した実験計画に沿って、血友病Aにおける新規治療戦略のための基礎的研究は順調に研究が進行している。引き続き、年次計画に従って研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも消耗品がわずかに少ない量で研究遂行できたためであると思われる。翌年度の助成金と合わせて、当初計画での消耗品購入のための使用を引き続き行なって いく予定である。
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