研究課題
IgA血管炎は、小児全身性血管炎として最多で、20~80%の症例に紫斑病性腎炎(HSPN)を合併し、小児の二次性糸球体腎炎の中で最も頻度が高く、HSPNの重症度がHSPの予後を左右する最重要要因となっている。現時点では腎予後と発症早期の組織学的重症度はよく相関するため、病勢の把握及び治療には腎生検による病理組織学的診断が必須であるが、腎生検は侵襲的検査であり,繰り返し行うことも困難である。また、HSPNの中には無治療で自然軽快する症例もあれば、一部に末期腎不全進行症例もあり、腎生検及び治療介入時期の決定が難しい。そこで尿バイオマーカーを用いてHSPNの診断及び重症度を腎生検から得られる結果と同等に非侵襲的に診断することが可能となれば非常に有用であるため、腎生検組織診断にて確定診断がついた、紫斑病性腎炎、IgA腎症及び腎疾患のないスクリーニング検査で尿検体を採取した小児から尿検体を採取し、尿中NGAL、KIM-1、L-FABP、IL-18等の測定やtotal RNAを抽出し、mRNAの検出及び定量するとともに、HSPN特有の尿バイオマーカーのパターンや各腎生検組織病変(メサンギウム増殖、管内細胞増多、分節性硬化/癒着、尿細管萎縮/間質線維化、半月体、全節性硬化)と尿バイオマーカーとの相関を検討して、尿バイオマーカーによるHSPN及びその重症度を診断することを目的とした。計128検体を収集し、尿バイオマーカーを測定した後解析を行い、メサンギウム増殖を示す腎炎群ではL-FABP1, Megalin, Thy1, Cubilinの発現が低下、IgA腎症及び紫斑病性腎炎のIgA関連腎疾患群ではL-FABP1の発現の低下、Podocinの発現とIL-18の濃度の上昇の所見を得た。しかし、IgA腎症と紫斑病性腎炎の判別ができず、紫斑病性腎炎の検体数の不足(10名)が考慮された。
3: やや遅れている
計128検体の解析を行った(微少変化:53名、びまん性メサンギウム増殖性腎炎:3名、巣状分節性糸球体硬化症:5名、Alport症候群:2名、膜性腎症:2名、膜性増殖性糸球体腎炎:2名、ループス腎炎:12名、IgA腎症:39名、紫斑病性腎炎:10名)。メサンギウム増殖を示す腎炎群(びまん性メサンギウム増殖性腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎、IgA腎症、紫斑病性腎炎)ではL-FABP1, Megalin, Thy1, Cubilinの発現が低下していた。IgA腎症及び紫斑病性腎炎のIgA関連腎疾患群ではL-FABP1の発現は下がっていたが、Podocinの発現とIL-18の濃度は上昇していた。しかし、IgA腎症と紫斑病性腎炎の間での各発現の差は認められず、IgA腎症39名に対して、紫斑病性腎炎の検体数が10名であったことがその原因と考えられるため、研究期間を延長して紫斑病性腎炎患者の尿検体採取を追加してさらに検討することとした。
小児の疾患に多い微少変化型ネフローゼ症候群や慢性腎炎で経過観察の期間が長いIgA腎症患者の尿検体採取は容易に数を集めることができたが、紫斑病性腎炎については比較的短期で経過観察が終了することもあるためか3年間の研究期間内での検体数が思ったほど収集できず、解析の段階で正確な比較ができたかどうかについての疑問が残るため、研究期間を延長して、検体を更に集めた後再度解析することとした。
コロナ禍のため国際学会、国内学会は全てWeb開催となり旅費は不要となった。また解析の結果、正確な解析結果を得るために症例数を増加させる必要があるため研究期間を延長し、結果の報告、論文作成のための費用に余剰分を充てる予定である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 1件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 7件)
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