Fontan手術は、単心室形態あるいは二心室修復が困難な先天性心疾患に対する最終の機能的修復術である。Fontan循環は肺に駆出する心室を有さないため、循環予備が乏しい。安静時に高い中心静脈圧は運動時にはさらに上昇するため、過度な運動はFontan手術後の遠隔期合併症につながる可能性がある。反対に、安定した慢性心不全に対する運動療法は、心血管機能、筋、神経液性因子、QOLに対する効果があり、推奨されている。これまで、Fontanの至適な日常運動量の知見はない。我々は、加速度計を用いた日常運動の量と質測定と静脈圧・静脈血管床評価を含む詳細な外来Fontan循環評価システムを作成した。本研究では、汎用運動量計を一年中携行することにより、年間を通じたすべての運動量、歩数を検討した。これらの経時フォローにより、個々のFontan患者の日常運動の量と質、パターンが、中期的なFontan循環や臓器障害進展にどのような影響を及ぼすかを検討した。 約10名の夜間在宅酸素使用中のFontan患児で日常運動量を引き続き継続測定した。フォロー中の年長児のうち、心血管に非薬物的介入を行った2名について、検討した。 Fontan導管狭窄をステント拡大した1名では運動量に著変なく、歩行が主なものの一日の歩数が2万歩を超えての生活が続き、休日の十分な休息が必要と考えられた。房室弁逆流に対し弁形成術を行った1名では、弁逆流量は減少し、手術前の低めの活動量はやや増加したが、静脈圧測定下の運動負荷エコーで評価する静脈圧・拍出量関係は、手術前と著変を認めなかった。今回の方法論は、既存の方法で把握困難な個々の循環動態や運動量を明らかにする点で有用な方法と考えられた。
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