研究課題
本研究は、乳児期に発症する難治てんかん症候群の一つであるドラベ症候群について、てんかん発作発生に関与する脳領域を解剖学的に解明し、正常神経細胞を移植し治す新規治療法(細胞移植治療法)の実現化を目指すものである。2019年度は昨年度に引き続き、ドラベ症候群モデルラットにおいて疾患病態に関連する脳機能変化を経年齢的に明らかにするため、マンガン造影磁気共鳴画像 (MEMRI)による解析を継続した。具体的には、MEMRI撮像条件の改良、アーチファクト修正プログラム作成等の実験上の問題点を解決し、最終的に発達期の各齢のラットについて多数の個体で解析を実施した。その結果について統計学的解析手法を検討した結果、疾患ラットでは、ある週齢帯で顕著な機能変化が広範な脳領域に生じていることを同定した。この所見に対して考えうる病態仮説を立て、それを改善しうる薬剤を用いてレスキュー実験を実施したところ、野生型健常ラットでは変化が見られなかったが、疾患ラットでMEMRI所見の有意な改善を認めた。この変化のてんかん病態への関与を確認するため、温熱誘発発作の特性を解析したところ、その一部の特性の有意な改善を確認した。また、頭蓋内脳波条件も確立し、疾患ラットの発作特性の解析にも成功した。これらは、これまで困難であったMEMRIによる齧歯類脳の詳細な解析条件を確立したことに加え、ドラべ症候群の新たな疾患病態を同定した画期的成果と考えられ論文化を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
概要で示した画期的成果が得られたが、発作に関与する脳局所のネットワークの同定を目論んでいた当初の目的とは異なる結果であり、細胞移植実験を戦略的に実施していくことが論理的にも望ましい状況とはならず、計画変更が必要であるため、おおむね順調と判断した。
すでに移植のための細胞リソースの準備はしていたものの、前述の状況であるため計画を変更する。つまり、ドラべ症候群のより適切な治療を確立することを目的に、MEMRIを用いて種々の薬剤投与による疾患ラット脳への影響を系年齢的・解剖学的に詳細に明らかにする実験を進めていく。
ほぼ計画通りに使用したが、少数の残額が生じたため。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
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