研究課題/領域番号 |
18K07804
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
栗林 太 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60251443)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 活性酸素 / 慢性肉芽腫症 / NADPHオキシダーゼ |
研究実績の概要 |
本研究の遂行に必須であるgp91phoxを細胞外から認識するモノクローナル抗体(7D5)の認識部位をまず明らかにすることを当初の目的とした。病原微生物等の貪食など、細胞が刺激された時に、細胞休止期には細胞内に存在する蛋白質、p47phox, p67phox, p40phoxとRacが、細胞膜に移行して膜蛋白質であるシトクロームb558(p22phoxとgp91phoxのヘテロダイマー)と結合することにより、食細胞NADPHオキシダーゼは活性化される。この活性化型NADPHオキシダーゼは活性酸素の1種であるスーパーオキシド(O2-)を生成し、このO2-から派生した様々な活性酸素種は強力な殺菌作用を持つ。これらオキシダーゼ複合体を構成する蛋白質の1つでも遺伝的に障害されると、慢性肉芽腫症(CGD)になり、重篤な感染症を繰り返す。これら活性酸素生成タンパク質の内、gp91phoxだけは性染色体にコードされているので、患者の80%程度は男児である。これまで、CGDの診断は申請者等が作成したモノクローナル抗体(7D5)により行って来た。この抗体は、gp91phoxを細胞胞外から認識する抗体であり非常に便利ではあったが、エピトープ(gp91phox上の抗原)は不明のままであった。7D5はヒトのgp91phoxには結合するが、マウスには結合しない。そこで、まず我々は様々なキメラタンパク質を生細胞に発現可能なアッセイ系を構築した後7D5の結合実験を行った。更に詳細な結合マップを形成するために、様々なpoint mutationをgp91phoxに導入し解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題を2018年度の交付科学研究費により遂行していたが、まず予定していた7D5の抗原を血清することができ、その後のin vitroの細胞アッセイ系の構築と解析に進むことが可能となった。2018年に英文誌を著すこともでき、現在サンプル収集と調整に関する研究を予定よりも早期に実施している。
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今後の研究の推進方策 |
gp91phox認識抗体(7D5)の認識部位を明らかにすることができたが、抗原の不明な、かつ認識様式の異なる抗体が複数存在する。そのため、これらの抗体の認識機構の解明を引き続き網羅的に明らかにする。本申請課題の更に進んだ目的は慢性肉芽腫症(CGD)患者の治療である。このCGDを含めた遺伝病の約40%は塩基置換により発生する中途ストップコドン(pre-mature stop)のために、完全長タンパク質ができないことが原因である。CGDの原因の一部ではあるが、治療によりpre-mature stopを含むmRNAの一部を除去することができれば、正常に近い長さのタンパク質の翻訳が可能となり、症状の改善が期待できる。大きな目的の1つとして、pre-mature stopの除去機構の解明とCGD患者の症状の改善を今後行いたい。そのために、IFNγが有効な培養細胞を解析し、gp91phox遺伝子にpre-mature stopが存在することを明確にする。その培養細胞からmRNAを精製し、RT-PCRからpre-mature stopを持つexonを欠損したgp91phoxmRNAを同定する。NASはIFNγに誘導されることを確認する。次に短いmRNA由来のタンパク質の発現を確認し、同時に活性酸素を定量する。gp91phoxをコードする遺伝子上で、電子伝達機構上必須である領域をコードしている重要な部分、あるいは構造維持のために必要な部位に対応するexon の欠損を生じる場合はIFNγが無効と考える。このIFNγ無効例を解析することにより、gp91phoxの機能的にも構造的にも重要な領域を明らかにできると考える。これらの解析を通して、IFNγの有効例と無効例の遺伝子変異部位の分布を解析し IFNγの治療指針を提示したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に交付していただいた科学研究費により、本研究課題を遂行していたが、予想よりも早い研究結果を得ることができ2018年に英文誌を著すことができた。本申請課題を更に進めるために、翌年度分として請求した助成金を前倒ししてサンプル収集と調整に関する研究を早期に行う必要が生じ、次年度使用額が0よりも大きくなった。
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