研究実績の概要 |
活性酸素は生物にとって有害な作用をもつ。特にカタラーゼ陰性細菌の感染力に関与する。ヒトにおいても活性酸素は血管閉塞後の再開通時の組織障害の主因と考えられている。そのため、急性期の血管障害の治療薬の1つに活性酸素除去薬も使用される。この活性酸素産生タンパク質である好中球NADPHオキシダーゼは細胞膜内在性のヘムタンパク質であり、酵素活性の本体はヘムタンパク質であるシトクロムb558が担う。このシトクロムb558はgp91phoxとp22phoxのヘテロダイマーと考えられており、gp91phoxがヘムの他、NADPHの電子伝達を担うと考えられているが、gp91phoxとp22phoxの構造や機能は細胞膜タンパク質の複雑な複合体のために詳細は未知のままであった。慢性肉芽腫症は好中球が活性酸素を産生できないために、幼少期から細菌や真菌感染を繰り返す疾患であり、gp91phoxがX染色体にコードされていることから患者の多くは男性が罹患する。申請者は一貫して本疾患の診断やタンパク質の解析を行ってきた(Blood1995, EMBO2002)。 本申請課題で申請者等はこのgp91phoxの解析を進めてきた。例えば、gp91phoxの細胞外ドメインの構造を明らかにし、糖鎖の結合するgp91phoxの結合様式を明らかにした。細胞膜タンパク質の立体構造の解析は現在でも難しいが、特異的な抗体を利用することで解析を成功させた(Microbiol Immunol2018)。また、申請者等はgp91phoxファミリーを構成するNOX1とNOX4の解析を行い、NOXファミリー全体に普遍的な活性発現に関する知見を著した(J Biol Chem. 2020, Free Radic Res. 2020)。更に、慢性肉芽腫症治療のためのgp91phoxの転写翻訳調整の予備的な解析を行った(Microbiol Immunol.2019)。
|