研究課題
細胞の機能は、発生・分化、遊走、貪食、殺菌、顆粒放出など多岐に渡り、高感度のライブイメージング技術によって正常と疾患の相違を調べることができる。しかし、本来の細胞機能を調べるためには、生体内での細胞環境やシグナルの時間的変化を再現しなければならない。例えば、好中球の遊走は、炎症局所で産生・拡散したシグナル分子を認識して、炎症局所へ集積する。この時、好中球は遊走シグナルの低濃度から高濃度の方向へ進行する。従来のライブイメージング技術では、遊走のエンドポイントでの定量はできても、その過程が不明で詳細な観察はできなかった。今回、化学物質の濃度勾配を形成し、高倍率画像や蛍光画像が取得できる装置を用いて、遊走能、貪食能、殺菌能、形態学的変化を検討する。2018年度は、測定方法の実験系を樹立するために検討を行った。今回、活性酸素を測定するために用いる蛍光物質Aminophenyl Fluorescein(APF)は、green fluorescent protein(GFP)と同様の波長を有する蛍光物質である。そこで、レトロウイルスベクターを介してGFP遺伝子をヒト白血病細胞株であるK562細胞へ導入し、GFPを恒常的に発現する細胞株を作成した。このK562-GFP細胞株を活性酸素産生細胞のPositive controlとして用いて、蛍光強度を検討するための実験系を樹立した。なお、可視光では細胞の形態および移動速度、加速度、移動方向について評価可能なことを確認した。その後、健常者の好中球を用いて正常好中球の活性酸素産生作用を測定し、健常者の正常コントロールのデータ収集を開始した。
3: やや遅れている
本研究では、微小な空間に、化学物質の安定的な濃度勾配を形成し、かつ、その化学物質に対する細胞の反応を高倍率の蛍光画像でリアルタイムに観察・撮影可能な装置を用いて、これまで観察できなかった生体内における細胞の動態をin vitroで再現するための実験系を構築することを目的としている。好中球機能を解析する上で、細胞のviabilityは測定結果に影響する大きな要因となる。今回、好中球分離の過程で、細胞のviabilityが30-95%と大きく変動することが明らかとなった。そこで、細胞の輸送や解析までの時間、分離方法について、検討する必要があると考える。2019年度は、患者検体を用いた解析を行う前に、引き続き健常者の好中球分離の条件検討を行うことから、現在までの進捗(2018年度の到達度)は、約80%と考える。
2019年度は、好中球分離の条件検討を行ったのち、患者検体を用いた解析を開始しデータを集積する。患者検体を使用するにあたり、当センター倫理委員会にて研究実施計画(研究課題「先天性免疫不全症の診断ならびに病態解析に関する研究」)が承認されている。また、活性酸素産生能が障害される慢性肉芽腫症患者から、臨床研究を行うための同意を得た。そのため、細胞分離法の調整が終了次第、健常者と食細胞機能異常症の患者検体を用いた解析を開始できる。
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