研究課題/領域番号 |
18K07818
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
丸尾 良浩 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80314160)
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研究分担者 |
中原 小百合 滋賀医科大学, 医学部, 特任助教 (30599204)
柳 貴英 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (70418755)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新生児高ビリルビン血症 / ビリルビン脳症 / ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素 / ヒト化UGT1Aマウス / UGT1A1 / 核黄疸 |
研究実績の概要 |
申請者および研究協力者のカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)Tukey教授が作成した3種類の新生児高ビリルビン血症を起こすhumanized UGT1A1 mouse [Alb UGT1A1*1wt/Ugt1-/-、Alb UGT1A1*1△71/Ugt1-/-、TG(UGT1A1*1)Ugt1-/-、TG(UGT1A1*28)Ugt1-/-]のうち、UGT1A1 mouse [Alb UGT1A1*1wt/Ugt1-/-、Alb UGT1A1*1△71/Ugt1-/-は持続性の軽度の高ビリルビン血症を起こすが、新生児期にはヒトのような新生児高ビリルビン血症をきたさないことがTukey教授との共同研究でわかった。一方TG(UGT1A1*1)Ugt1-/とTG(UGT1A1*28)Ugt1-/-は新生児高ビリルビン血症を起こし、新生児マウスのうち10%が高ビリルビン血症をきたす。そこで、TG(UGT1A1*28)Ugt1-/-(以下、ヒト化UGT1Aマウス)を用いて、ヒトの新生児高ビリルビン血症と核黄疸の発生に関しての研究を進めた。マウスはUCSDから日本国内に搬入したもので、滋賀医科大学動物生命化学研究センターで飼育しマウスの新生児高ビリルビン血症と脳に与える影響(ビリルビン脳症:核黄疸)を検討した。 ヒト化UGT1Aマウスは新生児期に高ビリルビン血症をきたし、これまで報告されていたより多くのマウスが新生児期に高ビリルビン血症をきたしたのち死亡している。脳組織の検討では組織学的検討に比べ、神経細胞の変化に伴い発現する様々な遺伝子の発現パターンを遺伝子パネルを用いて検討中である。現在、研究の遅れにより、遺伝子の発現パターンと組織障害との関係についてはまだ十分できておらず、引き続き研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
UCSD、Tukey教授研究室で作成されたヒト化UGT1Aマウスの大学動物生命科学研究センターへの納入が手続きなどのため2020年春まで遅れたため、研究の開始が遅れた。その後、塚村篤史大学院生、滋賀医科大学神経難病センター森雅樹准教授との研究を開始し、ヒト化UGT1Aマウスの新生児高ビリルビン血症、核黄疸の研究に着手している。主要な共同研究者の森雅樹准教授が2020年10月より国立循環器病研究センター血管生理学部の室長として転出したため、滋賀医科大学(滋賀県大津市)と国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)との間を行き来しながら研究を続けた。しかし、新型コロナウイルス感染症感染爆発による緊急宣言・自粛のため、県境をまたぐ移動の制限があり、研究に遅れを生じた。
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今後の研究の推進方策 |
現在解析ををしている、ヒト化UGT1Aマウスを用いたヒトの新生児高ビリルビン血症のモデルを用い、新生児期に起きる各黄疸の分子生物学的発症病理を解明する。ヒトとサルの一部以外新生児高ビリルビン血症を起こさないため、動物モデルは存在せず、過去の研究からは、どの脳に高ビリルビン血症が核黄疸を発生させるのかが解明されていない。また、新生児期の高ビリルビン血症に対する治療はこれまで光線療法と交換輸血しかなかった。高ビリルビン血症による核黄疸の分子組織学的発症メカニズムを明らかにすることにより、核黄疸の発症を防ぐための治療薬の開発が可能になる。 また、新生児高ビリルビン血症の管理および光線療法や交換輸血により新生児の核黄疸予防は確立されたものとなってきていた。しかし、新生児集中治療の発達により、早産児、超早産児が助かるようになってきた。その中で、早産児~超早産児におけるアテトーゼ型麻痺の症例が増えてきていることが問題となっている。これらの症例の解析により核黄疸が多くの症例に認められていることが現在私が加わっているAMEDの研究により判明した(Okumura A, Maruo Y, et al. A nationwide survey of bilirubin encephalopathy in preterm infants in Japan. Brain Dev. 2020;42:730-737)。早産児の核黄疸は、成熟児と異なり、予想外に軽度の高ビリルビン血症でも起こる可能性が判明した。そこで、早産児の核黄疸発生の発生を減らすため、ヒト化UGT1Aマウスにみられる高ビリルビン血症による核黄疸の管理を元に、早産児の新生児高ビリルビン血症の管理法を確立するための基礎的研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
滋賀医科大学動物生命科学研究センターへのヒト化UGT1Aマウスの搬入の審査手続きに時間がかかったこと、新型コロナウイルス感染症拡大のため、共同研究施設の国立循環器病研究センターへの往来の制限があり予定通りに研究の進行が進まなかったため、次年度への研究費の持ち越しが生じた。引き続き、残りの研究を進める。
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