研究課題/領域番号 |
18K07823
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
清水 千草 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70435072)
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研究分担者 |
荒田 晶子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (00266082)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | GABA / KCC2 / 脊髄 |
研究実績の概要 |
子宮内で手足を活発に動かす胎児の動きを母親は“胎動”として感じる。胎児期の運動機能の発達において、鍵となる分子が、抑制性神経伝達物質GABAである。なぜならば、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)やGABAをシナプス小胞に充填する小胞性GABAトランスポーター(VGAT)の欠損マウスは、いずれも四肢の筋硬直による運動失調を呈し、生直後に死亡するからである。GABAが抑制性に働くためには、細胞内Cl-濃度([Cl-]i)を低く保つことが必須であり、細胞外へCl-を排出するK+-Cl-共輸送体(KCC2)が重要な役割を担っている。KCC2欠損マウスもGAD、VGAT欠損マウスと同様、運動失調を呈し生直後に死亡する。 これらのことから、胎児期の運動機能の発達には、「GABAの放出」と「抑制性応答」の両方が、重要であると考えられる。しかし、GABAの放出とその抑制性応答が、発達に伴いどう変化し、胎児期の運動機能の発達とどのように関連しているのか不明な点が多い。そこで、運動情報の出力を担う脊髄前角に着目し、GABAの放出及びその抑制性応答の発達変化を明らかにし、胎児期の運動機能の発達との関連を解明することを本研究の目的とし、以下の①から④について検討する。 ①脊髄前角におけるGABA放出の発達変化、②脊髄運動神経細胞のGABAに対する応答性が、いつ興奮性から抑制性に変化するか、③上記の①及び②により、運動神経細胞から前肢への出力が、どう変化し、運動機能の発達と関連するか④GAD、VGAT、KCC2の欠損マウスが呈する運動失調の原因を解明し、その回復に挑戦する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者である清水(琉球大学)は、脊髄急性スライスからホールセルパッチクランプの実験系を立ち上げ、順調に実験を進めている。国際学会も含め、複数回の学会発表を行った。 分担者である荒田(兵庫医科大学)は、脊髄摘出標本を用いた研究について国際学会も含め、学会発表を行った。さらに、本研究で使用している脊髄摘出標本についての総説などを発表した。 清水と荒田は、研究打ち合わせを兵庫医科大学にて行い、互いの研究の進捗状況などについて話し合っており、順調に研究を進めていく環境を整えた。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、脊髄急性スライスを用いたホールセルパッチクランプ法を用いたGABA放出の変化について、運動神経細胞がとらえやすく、パッチクランプ法を適用しやすい出産に近い日齢を主に使用し行った。今後は、急性脳スライスの作成が難しく、さらに日齢の若いスライスについて、ホールセルパッチクランプ法等を適用し、研究を推進したいと考えている。脊髄摘出標本については、今後例数を重ね、ノックアウトマウスなどに対応できるように準備を整えていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
北米神経科学会などの国際学会や他の国内学会に参加する予定であったが、授業などのスケジュールの都合が合わず、参加が叶わなかったことから、旅費などの支出が減少したため。マウス飼育費用(動物施設使用料)が予定していた額よりも少なくできたことなどの理由より次年度使用額が生じた。
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