研究課題/領域番号 |
18K07828
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
森本 哲 自治医科大学, 医学部, 教授 (30326227)
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研究分担者 |
翁 由紀子 自治医科大学, 医学部, 講師 (30438650)
早瀬 朋美 自治医科大学, 医学部, 助教 (50433587)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ランゲルハンス細胞組織球症 / BRAF V600E変異 / MAP2K1変異 |
研究実績の概要 |
LCH細胞にはMAPキナーゼ経路の遺伝子に相互排他的な発がん性変異があることが報告され、海外ではBRAF V600E変異が最も高頻度で50~60%の症例に見いだされ、BRAF V600E変異陽性の患者は病勢スコアが高いこと、再発が多いこと、中枢神経関連合併症の頻度が高いことが欧米から報告されている。しかし、本邦では遺伝子変異の頻度の報告はなく、臨床像との関連も明らかではない。本研究は、本邦での遺伝子変異の頻度を明らかにし、遺伝子変異による層別化治療を確立することを目的としている。 後方視的に収集した59例(小児50例、成人9例)の日本人のLCH患者の病変組織の検体を用い、変異特異的リアルタイムPCR法によってBRAF V600E変異を行った。27/59例(46%)(小児 24/50例(48%)、成人 3/9例(33%))が、BRAF V600E変異陽性で、欧米での頻度とほぼ同等であった。BRAF V600E変異陰性32例のうち、良質で十分量の検体が得られた17例において、BRAFおよびMAP2K1のEx.2とEx.3のtarget sequenceを行った。14/17例(82%)にBRAF V600E以外の変異を認めた。BRAF遺伝子Ex.12のin-frame欠失 (p.486_491del) 3例、Ex.12末端の重複 (c.1511_1517+2dup) 2例、MAP2K1遺伝子のEx.2のin-frame欠失 (p56_60del、p.56_61del、p57_62del、p.58_62del) 7例、Ex.3の変異(p.E102V とp.I103Nの共存、p.105_107del)が2例であった。以上より、BRAF V600Eの変異特異的PCRおよびBRAF/MAP2K1のtarget sequenceの両者で検索し得た、41/44例(93%)で変異が確認できた。 小児50例における臨床像と遺伝子変異との関連の解析では、BRAF V600E変異は性別、診断時年齢、病型、初期治療反応性、再発、中枢神経関連合併症と関連しなかった。一方、MAP2K1 Ex.2変異を認めた4/6例はリスク臓器陽性多臓器型(MS-RO+)で、MS-RO+は有意に同変異が多かった(p=0.013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BRAF V600E変異の頻度は欧米とほぼ同等であることが明かとなってきた。日本においては、BRAF V600E変異は病型や予後とは関連しないことも明らかとなってきた。一方、MAP2K1 Ex.2変異は高リスク病型と関連する可能性が示唆された。しかし、この解析は、後方視的に収集した検体で、症例数が不十分であり、target sequenceが可能であった例が少ない。前方視的に収集した検体を用いた、さらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
新規に発症した小児LCHを対象とした前方視的臨床試験であるLCH-12に登録された、100例を超える多発骨型と多臓器型の症例において、BRAF遺伝子およびMAP2K1遺伝子の変異解析を進め、このコホートにおいても、これまでに得られた我々の知見が再現されるか解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
後方視的に収集した約60例の検体の解析を優先して行ったため、前方視的に収集したLCH-12登録例の解析はまだ進んでいない。次年度は、前方視的に収集した100例余りの解析を行うため、試薬代などの支出が大幅に増える。
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