研究課題
LCH細胞にはMAPキナーゼ経路の遺伝子に相互排他的な発がん性変異があることが報告された。欧米では、BRAF V600E変異は、最も高頻度で50~60%の症例に見いだされ、高リスク(病勢スコア(DAS)・再発率・中枢神経関連合併症頻度が高い)と報告されている。しかし、本邦では遺伝子変異の頻度の報告はなく、臨床像との関連も明らかではない。本研究は、本邦での遺伝子変異の頻度を明らかにし、遺伝子変異による層別化治療を確立することを目的としている。後方視的に収集した59例(小児50例、成人9例)の日本人のLCH患者のBRAF V600E変異解析では、陽性率は全体で46%(小児 48%、成人 33%)であった。同変異陰性の17例においてBRAFおよびMAP2K1のEx.2とEx.3のtarget sequenceを行い、14例に変異が同定された。Fullに解析できた44例中41例(93%)でBRAFまたはMAP2K1に変異が確認された。小児例においてBRAF V600E変異と臨床像との関連を解析したが、性別、診断時年齢、病型、初期治療反応性、再発、中枢神経関連合併症との関連は認めなかった。前方視的介入試験(LCH-12試験)の治療対象となった診断時年齢20歳未満のLCH患者104例の腫瘍検体においてBRAFおよびMAP2K1変異の解析を行った。BRAF V600E変異を45例(40.4%)、BRAF indelを7例(6.7%)、MAP2K1変異を33例(31.7%)に認めた。BRAF V600E変異はDASが6以下(N=91)では38.5%、7以上(N=13)では76.9%であり、同変異はDAS高値例に有意に多かった(p=0.014)。遺伝子変異型と病型・初期治療反応性・無イベント生存率・全生存率との間に関連は認めなかった。日本では、BRAF V600E変異は欧米に比べやや少なく、DASと関連するが、転帰とは関連しない。
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