研究課題/領域番号 |
18K07831
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高橋 昌里 日本大学, 医学部, 客員教授 (60328755)
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研究分担者 |
金田 篤志 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10313024)
福田 昇 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (40267050)
諸橋 環 日本大学, 医学部, 助教 (60781416)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胎児期低栄養 / 幹細胞 / エピジェネティクス / 高血圧 / タウリン |
研究実績の概要 |
胎児期低栄養の出生児が成人期に腎障害、高血圧を発症する事が報告されているが、その機序は明確でない。今回、胎児期低栄養およびタウリン欠乏が胎児の組織幹細胞の記憶(エピジェネティクス)に異常を来し、成人期に腎障害、高血圧を発症するか検討した。方法として正常栄養妊娠ラットからの産仔ラット(コントロール群)、飼料のタンパク質含有量を8%に制限した低栄養妊娠ラットからの産仔ラット(LP群)、妊娠低栄養に3%タウリン水を負荷したラットからの産仔ラット(LPT群)で体重・血圧の推移を長期間観察した。また各群9週齢でlabel-retaining cell (LRC)を標識するbromodeoxyuridine (BrdU)を一定期間投与し、その後14週齢で摘出した腎臓におけるLRCの発現を定量化した。さらに14週齢でのCD44陽性間葉系幹細胞(MSC)のTGF-β1によるメサンジウム細胞への分化をαSMA、レニン等の免疫染色およびWestern blotにて解析し、MSCのエピジェネティクスを ATAC-seq解析で行った。結果として30週齢以降で、LP群の血圧は他群より有意に高かった。14週齢のLP群で腎内LRC数は有意に低下したが、LPT群では低下しなかった。LP群のMSCはコントロール群に比し、既にαSMA陽性間葉細胞に分化しておりレニンを発現していた。またLP群のMSCはエピジェネティクスに差異を認めた。以上よりLP群でのLRC数の低下やMCS自体の分化異常の結果から、胎児期低栄養は産仔腎臓内の組織幹細胞のエピジェネティクスに変化を与え、成人期に至ってからの腎障害、高血圧を引き起こしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に開始した当研究は、当初腎臓由来間葉系幹細胞(MSC)をCD44のダイナビーズでソートし、培養にて増やす予定であったが、通常培養ではMSCが死滅するため、MSCの増殖に適した低酸素下での培養に変更してからは順調にMSCを増やす事が出来た。産仔ラットのテイルカフによる血圧測定もでき、30週齢以降でLP群が予想通り他群より有意に血圧が高かった。14週齢のLP群で腎内LRC数は有意に低下していたが、胎児期にタウリンを負荷すると低下しなかった。LP群のMSCはコントロール群に比し、既にαSMA陽性間葉細胞に分化しており、レニンを発現していた。MSCのエピジェネティクスは研究分担者である千葉大学分子腫瘍学の金田先生の指導によりATACシークエンスでのオープンクロマチンに関係する遺伝子の解析がすみ、RNAシークエンスでの遺伝子と合わせて、現在エピジェネティクスの解析を行っているところで概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今回、胎児期低栄養の産仔ラットは血圧が上昇し、腎内LRCが低下していたことから、EPC 機能と酸化ストレスを検討する。まずラット下大静脈からの単核球を播種し、5%CO2インキュベーターで24時間培養し、非付着細胞を回収し培養液に浮遊させ、細胞数をカウント後、Vitronectinコーティングした24-well dishに再播種し6日間培養する。ウエル中のEPC colony数を顕微鏡下にてカウントする。酸化ストレスはTBARSアッセイを測定する。また胎児期低栄養腎由来MSCのエピゲノム解析をATACシークエンス、RNAシークエンスで同定を試み、得られた候補遺伝子について、今後MSCの培養系でsiRNAでloss of functionを行いその意味合いを確認していく
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