研究課題
急性リンパ性白血病(ALL)に対して投与される6MPに対する感受性に影響を及ぼすことが知られているNUDT15 genotypeに関して、我々が独自に開発したdigital droplet PCR法を用いたdiplotype決定法について公表を行なった (Tsujimoto S, Osumi T et al. Leukemia 2018)。次に、正確なNUDT15 genotypeの頻度を把握し、付随した臨床情報との統合解析を行うために、東京小児がん研究グループ(TCCSG)および小児白血病研究会(JACLS)の治療研究に登録された979名の大規模コホートを用いて、NUDT15 genotypeの特定を行い、予後との関連について検証した。genotypeの特定についてはSanger sequence法に加えて、次世代シーケンサーを用いた方法を併用した。wild/hetero/homoの頻度はそれぞれ 753 (75.8%), hetero 195 (20.3%), homo 11 (1.2%)だった。NUDT15のgenotypeと予後との相関については、3群で無イベント生存率、全生存率に差は見られなかった。この結果により、6MPのgenotypeに基づいて適切に6MPの減量がなされることで、有害事象を回避することができ、治療効果を維持できることが示唆された。次に、臨床的に重要度の高いNUDT15 homo患者の真の6MP耐用量について多数例の解析を行うため、国際共同研究を行なった。上記の日本からのコホートからの15例に加えて、シンガポール7例、台湾1例、の計25例の解析を実施した。全例で6MPに対する高感受性が確認され、耐用量は5-10mg/m2と非常に低かった。一方でhomo患者の中でも多型の組み合わせにより耐用量に差があることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画で予定していた新規diplotype決定法開発に関する論文化は完了した。また、大規模コホートを用いた真の多型頻度解析と予後との関連の解析、homo多型患者の臨床情報の収集も予定通りに実施できており、順調に研究が進んでいる。
さらに解析の質を高めるために国際共同研究をすすめ、論文化を実施する。大規模コホートを用いた真の多型頻度解析と予後との関連についてはシンガポールと台湾で治療されたコホートを加えた統合解析を予定している。homo多型患者の臨床情報の収集については、中国の症例5例について、情報が得られる予定であり全30例の情報をまとめ、公表する予定である。また、すでに論文化したNUDT15 diplotype解析法について、シンガポールの共同研究者の開発した方法との比較検討の提案があり、検査法の標準化などを進める予定である。
残額が生じたのは試薬の購入時に割引があり予定額から残額が生じたためである。前年度残額分についてをNUDT15多型解析対象のコホートをさらに大きくし、解析を実施するためその試薬費用として使用する予定である。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Leukemia
巻: 32 ページ: 2710~2714
10.1038/s41375-018-0190-1