研究実績の概要 |
急性リンパ性白血病(ALL)に投与される6MPに対する感受性に影響を及ぼすNUDT15 genotypeに関してその臨床的意義について研究を継続的に実施した。日本人における正確なNUDT15 genotypeの頻度を把握し、臨床情報との統合解析を行うために東京小児がん研究グループおよび小児白血病研究会の治療研究に登録されたALLの979名の大規模コホートを用いて、NUDT15 genotypeの特定を行い、予後との関連を検証した。genotypeはSanger sequence法および次世代シーケンサーを用いた方法を併用した。wild/hetero/homoの頻度はそれぞれ 753(75.8%), hetero 195 (20.3%), homo 11(1.2%)だった。NUDT15のgenotypeと予後との相関については、3群で無イベント生存率、全生存率に差は見られなかった。このことをさらに大規模なコホートで検証するために、現在シンガポールとの共同研究を進めている。 次に臨床的に重要度の高いNUDT15両アレル多型の患者の実際の6MP耐用量について多数例の解析を行うため、国際共同研究を行なった。日本からのコホートからの20例に加えて、シンガポール7例、台湾6例、中国3例、タイ1例の計37例の解析を実施した。全例で6MPに対する高感受性が確認され、耐用量は5-10mg/m2と非常に低かった。一方でhomo患者の中でも多型の組み合わせにより耐用量に差があることが確認された。このコホートでは、維持療法での開始用量を減量することで、重篤な骨髄抑制を回避でき、維持療法の中断を最小限にとどめられることが示された。
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