研究実績の概要 |
様々な疾病や障害を抱える可能性のある早産児の予後改善は、喫緊の課題である。早産児の動脈管開存症(PDA)の評価法、治療開始基準、治療法についての世界的なコンセンサスはなく、異なる状態・タイミングで種々の治療が行われており、治療の是非についても賛否が分かれている。 日本の34施設の新生児集中治療室(NICU)による前方視的観察研究(PLASE研究)で、30週未満の早産児の臨床情報・短期予後と生後2週までの詳細な心エコー評価データベース(DB)を構築している。本研究では、このPDAの心エコー指標と治療内容を内包する大規模DBに含まれる早産児の3歳予後を追跡調査し、早産児のPDAの有無や治療内容、治療のタイミングが3歳児発達予後に与える影響を調査した。 研究参加31施設の646名のうち3歳時に新版K式発達検査を施行していた399名を対象とした。発達指数(70未満)、脳性麻痺、視覚障害、聴覚障害などの合併症があった複合合併症群とこれらの合併症がなかった合併症なし群に分けて、早産児の治療内容とタイミング、外科手術の有無、日齢1,3,7,14、治療前と経過中の最悪値の心エコー検査指標を比較した。全対象者で比較検討した上で、在胎23-24週(84名),25-26週(118名), 27-28週(128名)、29週(69名)の4群に分けた比較検討も行った。PDAの外科治療の施行率は在胎23-24週:26%,25-26週:13%, 27-28週:5%、29週:1%であった。複合合併症率は在胎23-24週:43%,25-26週:35%, 27-28週:23%、29週:17%であった。 日齢3の心エコー指標を用いたPDA外科治療の予測モデルを作成でき、検証コホートでも良好な予測性能であった。早産児の出生後早期の心エコーを用いた循環管理と3歳時の発達予後の関連を検討中である。
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