研究実績の概要 |
本研究では、分子機構で不明な点が多い、卵巣発生の転写制御機構の解明を目指し、特に卵巣特異的分子のエンハンサーの同定について解析を行った。方法は、近年注目される、活性があるエンハンサーより特異的に産生されるRNAである。このRNAは標的遺伝子の転写活性と同期して発現レベルが上昇する可能性が示唆されている。以上より、複数のstageにおけるtranscriptome解析を行い、エンハンサーRNAと標的遺伝子の発現レベルの変化に注目し、卵巣特異的分子の特異的エンハンサー(cis 制御配列)の同定を試みた。顆粒膜細胞特異的にmCherryを発現する胎仔マウスより顆粒膜細胞を集め、CAGE法によるtranscriptome解析を行った。解析は胎生13.5, 16.5日と出生日の3時点で行い、標的遺伝子および該当遺伝子の上下流3Mbの範囲のintergenic領域のRNAの発現レベルの変化を比較し、エンハンサー候補領域を選択した。さらに対照として精巣のCAGE解析データおよびATACなどクロマチン解析なども利用し、エンハンサーの絞り込みを行い、最終的に3つの候補領域を選定した。このうち2つはWnt4およびRSPO1の上流10~100kbにあり、in vitroアッセイでenhancer活性を認めた。さらにヒトとも高い配列の相同性を認めたため、ヒトの卵巣機能障害疾患として、早発閉経、46,XX性分化疾患患者の配列を検索したところ、それぞれの領域より1例ずつ、稀少多型を認め、同領域が卵巣発生に重要な役割をもつことが示唆された。
|