研究課題
インターロイキン(IL)-36はIL-1ファミリー分子の一つであり、皮膚における生体防御、炎症に関与する炎症性サイトカインである。近年、IL-36のアンタゴニストであるIL-36RaをコードするIL36RN遺伝子の欠損により汎発性膿疱性乾癬を引き起こすことが知られてきており、国内でも症例報告が相次いでいる。汎発性膿疱性乾癬は難治性かつ希少疾患であり、その治療法は未確立である。一方、タンパク立体構造解析は創薬の基盤情報となりうるが、IL-1ファミリー分子についてIL-1、IL-18については受容体との詳細な複合体構造情報が明らかとなっているが、IL-36についての構造的知見は未解明である。本研究では、IL-36及びその受容体(IL-36R)、IL-36Ra及びIL-36Rの複合体構造決定を目指している。また、本研究では、構造情報を元に臨床応用へ展開する研究も目的としている。2018年度は、構造解析に必要な各種リコンビナント蛋白の大量精製を行い、IL-36α、IL-36受容体アンタゴニスト、IL-36受容体α鎖、IL-1RAcP(受容体β鎖)の精製方法は確立された。これらを使用して次年度以降複合体蛋白の精製、結晶化条件の検討、クライオ電子顕微鏡での構造解析に挑戦する予定である。これらと並行して汎発性膿疱性乾癬患者の遺伝子解析を随時行っており、新規に同定されたIL36RN遺伝子上の意義不明遺伝子バリアント(VUS)の病的意義の判定についてin vitro実験手法の開発も行っている。
2: おおむね順調に進展している
2018年度は、構造解析に必要なリコンビナント蛋白の精製を行った。大腸菌BL21(DE3)を使用してIL-36α、IL-36受容体アンタゴニスト、カイコを利用した蛋白発現系を使用してIL-36受容体α鎖、IL-1RAcP(受容体β鎖)の精製を行った。また、並行して哺乳類pcDNA3.1+にIL-36R全長遺伝子を組み込んだ発現プラスミドを構築し、HEK293細胞を利用したIL-36シグナル伝達実験系を構築した。今年度依頼のあった汎発性膿疱性乾癬患者のIL36RN遺伝子解析を行った。また、研究協力者より膿疱性乾癬患者で見出された新規遺伝子変異の情報提供を受け、変異導入プラスミドベクターの構築も行った。
2019年度以降は以下の項目について研究を進める。1. 前年度に引き続き蛋白精製を行い、順次複合体蛋白として調整を行う。2. 複合体タンパクの結晶化条件の探索を行う。3. 結晶タンパクが得られ次第、構造解析を行う。4. 結晶化条件の検討と並行して、クライオ電子顕微鏡による構造解析も試みる。5. 構造情報が得られ次第、構造情報を元にタンパク間相互作用が推定されるアミノ酸残基に変異を導入した 変異体タンパクを精製する。6. 変異体タンパクについて、タンパク-タンパク間相互作用解析(NMR, BiaCORE等)、タンパク安定性試験等のin vitro実験を行う。7. 変異導入タンパク、変異導入IL-36R発現プラスミドを構築し、HEK293細胞を使用した細胞培養実験でIL-36シグナル伝達実験系の活性を検証する。またIL36RN遺伝子変異を導入したリコンビナントIL-36Raがこのシグナル伝達系を阻害できるかどうかも検証する。
2019.3.30-2019.4.5の予定でイタリア ジェノバで開催される第10回国際自己炎症疾患学会に参加するため年度跨ぎの旅費を計上する必要が生じたため。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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