研究課題
肺動脈性肺高血圧 (PAH)は、特発性ないし先天性心疾患、膠原病などに二次性に発症する難治性疾患で、新たな治療法開発には病態解明に基づく新規の治療標的 の同定が重要である。最近、ヒトPAH類似の特徴的な閉塞性肺血管病変を有するラットモデルを用いて、病変の進展、退縮における脱分化型血管平滑筋と炎症細 胞の関与と網羅的遺伝子発現解析から得られた候補遺伝子MCP1受容体( CCR2)を報告した。しかし、内膜脱分化平滑筋細胞の由来細胞と、さらに CCR2がPAHの発 症、進展及び平滑筋の脱分化に必須か否かは不明である。本研究では、ゲノム編集技術による遺伝子改変ラットを用いて、PAHの責任病変である肺血管病変に於 ける内膜平滑筋細胞の由来する細胞を決定し 、CCR2がPAHの内膜病変形成に必須であるかを生体内 (in vivo)で解明する事が全体目標である。(A)CCR2 knock-outラットにおけるPAHによる肺血管病変への影響:現在、CCR2 knock-outラットと野生型ラットを用いて、SuHx処理と対照群の4群ないしMCT処理と対照群を作成し、処置開始後3週、5週、8週に心エコーで循環評価を行い、8週で心臓カテーテル検査による右室圧、大動脈圧測定後、屠殺し定量的組織評価、免疫染色による評 価を行なっている。血行動態的評価、組織病理の結果からは、CCR2 knock-outラットにおいて、有意な抑制を認めており、その機序の検討中である。 BMyh11-Creラットを用いたPAHモデルでの分化型平滑筋細胞のFate mapping解析:現在、ゲノム編集技術を用いて、Mhy11-Cre-ERT2ノックインラットに成功し、現在、肺高血圧モデルの実験を開始準備中である。
2: おおむね順調に進展している
CCR2ノックアウトラットの作成成功後に、順調に繁殖し、実験を行っている。現在、Sugen/Hypoxia処理肺高血圧ラットとMCT処理ラットを用いて、肺高血圧の抑制実験を終了し、有意な抑制効果を認めている。現在、その機序の検討中である。BMyh11-Creノックインラットも、作成に成功しており、今後肺高血圧モデルの作成中である。
(A)CCR2 knock-out (KO)ラットにおけるPAHによる肺血管病変への影響:CCR2 knock-outラットと野生型ラットを用いて、SuHx処理と対照群の4群、MCT処理と対照群を作成し、血行動態指標、組織学的指標に陽性結果を認めている。本年は、その分子生物学的解析、マクロファージのFACS解析も含めて、機序の研究を行い、実験を完結する。(B)Myh11-Creラットを用いたPAHモデルでの平滑筋細胞のFate mapping解析:Mhy11-Cre-ERT2 X LoxP-Rosa26-tdTomato knock-in (KI)ラットを作成し、3週、 5週、8週で心エコー、心カテによる右室圧測定後、屠殺し共焦点顕微鏡を用いて多重染色により分化型平滑筋由来細胞を評価する。 (C)上記ラットの交配によるCCR2欠損の肺血管病変、平滑筋の脱分化、炎症への影響の解析:上記ラットの交配により、肺血管病変、炎症細胞浸潤に加えて、分化型平滑筋由来細胞の動態を共焦点顕微鏡を用いて多重染色により評価する。上記2課題が、順調に行った場合に、検討を行う。
(理由):Myh11-Creラットの作成後、繁殖に時間がかかり、疾患モデルの実験数が予定より少ない。(使用計画):2020年度に、Myh11-Creラットの疾患モデルの予定の実験を行う。
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