研究課題
小児・AYA世代(思春期・若年成人)がん患者は、治療後に全身の臓器障害(晩期合併症)や二次がんを発症するリスクがある。とりわけ内分泌異常の合併頻度が高いことが報告されており、がん経験者(cancer survivor)は長期フォローアップが必要である。しかし小児から成人に成長していく過程で、医療機関への定期受診が途切れてしまうことにより、適切な医療サービスが享受できていない患者が多数存在していると考えられる。がん患者の長期QOL維持のために、小児科から成人診療科への円滑な移行(トランジション)が必須である。申請者は、小児・AYA世代がん患者の長期フォローアップにおける包括的な診療体制構築と適切な移行期医療の提供を目的として、以下の研究を行った。2018年度(初年度)は小児科と成人診療科の緊密な連携構築に向けて、がん患者の移行期医療に関するアンケート調査を行った。対象は日本小児内分泌学会評議員(137施設、183人)で、回答数 131部 、回答評議員数(同一施設内の評議員数を合計)174名 、回収率95.1%(174/183)であった。2019年度はこれらの評議員からいただいた回答を解析し、調査結果を関連学会にて発表し、移行期医療の現状や医療者の考えを明らかにした。また本アンケートの解析結果を英語論文にして、Clinical Pediatric Endocrinologyに投稿しアクセプトされた(4月発表予定)。次年度(2021年度)はこれらの研究成果をもとに、小児科と成人診療科への啓蒙活動をすすめる予定である。
2: おおむね順調に進展している
2018年度に日本小児内分泌学会評議員を対象にアンケート調査を実施し、2019年度に調査結果の解析を行い、関連学会で発表した。解析結果をまとめた論文はアクセプトされ、2020年4月公開予定である。新型コロナウイルス感染症の影響で学会や研究会が開催中止、海外渡航も不可となったことより、予定していた発表がいくつか不可能であった。
次年度は、日本小児内分泌学会評議員対象の小児・AYA世代がん患者の内分泌診療における移行期に関するアンケート調査の解析結果を踏まえて、成人内分泌医を含むヘルスケアプロバイダーへの啓蒙活動をすすめる予定である。
新型コロナウイルス感染症の影響で学会や研究会が開催中止、海外渡航も不可となったことより、予定していた研究活動が実施不能となり、今年度の研究費が一部未使用となった。
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