研究実績の概要 |
小児, 思春期・若年成人(adolescent and young adult:AYA)世代のがん患者は、治療後に様々な健康問題(晩期合併症)を生じるリスクがあり、サーベイランスが必要である。晩期合併症対策として長期フォローアップが必要であるが、小児がん経験者(childhood cancer survivors:CCS)では成人診療科への移行期医療が問題となっている。円滑に移行(トランジション)できず、適切な医療サービスを享受できていない患者がいる。そこで申請者は、小児・AYA世代がん患者の晩期合併症に対する先制医療開発を目指して、以下の研究を行ってきた。 最終年度(2022年度)はこれまでの研究の総括を行った。がん患者の晩期合併症において内分泌代謝異常の頻度が高いことから、小児・AYA世代がん患者の内分泌診療における移行期医療の実態調査を行い(Miyoshi Y et al. Clin Pediatr Endocrinol. 29(2): 55-62, 2020)、この調査結果をふまえて成人診療科医の理解を深めるため啓蒙活動を行った。第95回日本内分泌学会学術集会のクリニカルアワーにおいて、講演(小児・AYA世代がん経験者の内分泌異常対策~妊孕性温存から栄養管理まで~)した。長年取り組んできた小児・若年がん患者の妊孕性温存に関して医療費助成が開始され、不妊治療が保険適応となったことから、日本がん・生殖医療学会の理事として「がん・生殖医療」の普及に取り組んだ。がん患者(がん経験者)の栄養管理について現状を調査した。この他、日本小児内分泌学会CCS・内分泌腫瘍委員会の副委員長として、委員会で作成した「小児がん診療の手引き」の普及活動を行った。また日本小児血液がん学会の長期フォローアップ移行期医療検討委員会の委員に就任し、腫瘍医と共に晩期合併症対策に取り組んだ。
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