研究課題/領域番号 |
18K07843
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下野 九理子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (60403185)
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研究分担者 |
橘 雅弥 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特任准教授(常勤) (10722952)
富永 康仁 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 助教 (20599245)
岩谷 祥子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特任助教 (60724903)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | てんかん原性 / 脳波変化 / 神経炎症 / 難治てんかん / TMS |
研究実績の概要 |
小児期発症の難治てんかんの治療として反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の可能性について検討する研究である。脳の電気的刺激によって脳活動に変化を生じさせる治療は様々な応用がなされている。今年度は治療による脳波の経時的変化について検討した。中心側頭部に棘波を有する良性小児てんかん(BECTS)の脳波の経時的変化について検討した。自動spike検出ソフト(Persist)を用いて15症例のspike頻度を検出し、経時的変化を検討した。6-8歳で多くの症例のspike頻度はピークに達しており、多い症例で1分間に40回以上のcontinuous spike and slow waves (CSWS)に匹敵する脳波異常を示した。その後8-10歳で頻度は減少傾向に転じており、1年程度の経過で劇的に変化することがわかった。 rTMSを実施する場合にnon-invasiveな方法でてんかん焦点の正しい同定とその広がりを知る必要がある。そこで我々は、神経炎症と関連するtranslocator protein (TSPO)に対するradio-ligandである, 11C-DPA713を用いてPETを行なった。腫瘍、虚血性病変、先天性脳形成異常などの様々な病変に対して100%でuptakeを認めた。その病変の広がりはFDG-PETの低代謝領域よりは限局しており、よりてんかん原性領域を反映している可能性がある。一方で、MRIで認める病変の一部のこともあれば逆に二次性全般化発作を繰り返す症例においては同側海馬などの関連領域においてuptakeを認める症例も見られた。これらの結果をさらに解析し、どの様な症例においてどの様にして真のてんかん原性領域をnon-invasiveに同定していくべきかを検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID19のpandemicにより通常の診療以外での研究的来院や入院は制限された1年であった。従って実際のrTMS治療を行うことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
TMSのターゲットをナビゲーションシステムで同定して治療するためにてんかん原性領域の同定とその広がりを正しく評価することは重要であり、DPA713PETの解析をさらに進めてその方法を確立させたい。また、てんかん原性が減弱、あるいは抑制性神経の活動性を亢進させられているかどうかの評価としてspike頻度とamplitudeの減弱が計測できる。BECTSの経過においてspikeのamplitude計測でてんかんの抑制系の増強やてんかん原性の減弱を評価できそうかどうかについて引き続きPersistの脳波解析を進めていく。実際にTMS治療の被験者をリクルートしてできる体制が整った時点で行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19のPandemicにより研究活動が制限されており、全体的な遅れを生じているため。研究期間を延長して次年度に最終のまとめをするために使用する予定である。
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