研究実績の概要 |
本研究では、ヒト骨髄由来単核球細胞からCD90およびCD271共陽性細胞を単一細胞から培養して得られる増殖能、脂肪・骨分化能の異なる3つのサブタイプ(REC, MEC, SEC)の中から、Kruppel-like factor 4(KLF4)遺伝子が最も高発現しているヒトMSCサブタイプ(MEC)を用いて、間葉系幹細胞におけるKLF4の機能を解析し、またそれによって制御される分化制御の分子メカニズムを解明することを目的とする。 前年度までの研究から、MECにおけるKLF4遺伝子の発現抑制は、細胞増殖および脂肪や骨への分化を促進することが示唆された。そこで本年度は、そのような細胞の性質変化をもたらす分子メカニズムを明らかにするため、KLF4遺伝子を発現抑制したMEC(KLF4-KD MEC)での細胞内シグナル経路の変化を解析した。 その結果、KLF4-KD MECでAKTシグナル経路の顕著な活性化が認められた。AKTシグナル経路は、細胞増殖や分化を始め、細胞の様々な生理機能に関与していることが知られている。次に、AKTシグナルの活性化につながるさらに上流のシグナル経路を同定するため、データベースに登録されているKLF4遺伝子を強制発現させたMSCを用いたマイクロアレイのデータを解析したところ、TGFβレセプターの発現が顕著に変化していることを見出した。また、KLF4-KD MECにおいてもTGFβレセプターの発現量変化が起こっていることを確認できた。 以上の研究結果から、本年度の研究実績として、KLF4遺伝子はMSCの細胞増殖および分化制御に関与していることをより強く示唆するデータが得られた。
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