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2019 年度 実施状況報告書

ゲノム編集技術を用いた先天性好中球減少症の病態解析と治療開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K07847
研究機関広島大学

研究代表者

小林 正夫  広島大学, 医系科学研究科(医), 名誉教授 (00162016)

研究分担者 津村 弥来  広島大学, 医系科学研究科(医), 研究員 (80646274)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード先天性好中球減少症 / 疾患特異的iPS細胞 / 遺伝子編集 / 好中球エラスターゼ / SRP54
研究実績の概要

先天性好中球減少症(CN)は現在15種類以上の責任遺伝子が同定されているが,その病態の詳細が明らかとされていない疾患がある。本研究では重症先天性好中球減少症の一つで,最も頻度が高い好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE)変異によるCNならびにリボゾーム蛋白をコードするSRP54遺伝子変異によるCN(昨年本邦初の2家系3症例を同定)の病態を,それぞれ患者から樹立したiPS細胞を用いて,in vitroで検討を行っている。iPS細胞を造血細胞から骨髄顆粒球系に分化を行い,骨髄芽球,前骨髄球をFACSAriaにて純化し,細胞死のマーカーであるannexin VならびにPIにて染色,早期アポトーシスの亢進を確認した。特にELANE変異の好中球減少症では細胞死が著明であり,この現象が患者骨髄像でみられる前骨髄球から骨髄球レベルでの成熟障害を反映していると考えられた。一方,患者由来iPS細胞のELANE遺伝子をゲノム編集技術で修復を行い,同様に分化後の細胞死の検討では,明らかな細胞死の亢進が認められなかったことから,前骨髄球レベルで発現が著明となる好中球エラスターゼ変異が細胞死亢進に起因していることが証明された。変異好中球エラスターゼの関与を検討するために,患者由来と正常人由来iPS細胞にいて,好中球エラスターゼをノックアウトし,発現を抑えることにより,正常人由来好中球分化は全く変化が認められなかった。同時に患者由来の好中球分化もほぼ正常と同等に正常分化ならびに細胞死の亢進も認められなかった。以上から,変異好中球エラスターゼが何らかの蛋白分解を促進することにより,成熟障害の原因となっていることが推測された。現在,種々の変異エラスターゼの基質となる蛋白の同定をプロテオミクス解析から同定を試みている。またSRP54変異についてもプロテオーム解析を進行している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

iPS細胞からの分化は順調に進んでおり,一部では患者由来前駆細胞での細胞死の亢進を確認できている。今後は変異好中球エラスターゼの役割を明らかとしていく予定である。また本邦初で同定したSRP54変異好中球減少症の病態解析も並行して検討を行っており,両疾患の病態解明に向けて進行中である。

今後の研究の推進方策

変異好中球エラスターゼの役割を明らかとするために,プロテオーム解析を進行している。本解析により,変異酵素の基質の一部を同定することが可能となる。基質の同定は細胞分化における重要な蛋白であると思われるので,細胞分化に必須分子の同定に繋がることが予測される。

次年度使用額が生じた理由

研究計画は順調に進行しており,一部の消耗品の購入を追加をすることなく今年度の研究を施行した。次年度はここまでの研究実績の検証を含め,症例数を増加することで成果を確認する予定である。繰り越した15,4081円は次年度の消耗品費として,増加した研究対象症例の解析に使用予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Downregulation of endothelial nitric oxide synthase (eNOS) and endothelin-1 (ET-1) in a co-culture system with human stimulated X-linked CGD neutrophils.2020

    • 著者名/発表者名
      akamura-Utsunomiya A, Tsumura M, Okada S, Kawaguchi H, Kobayashi M
    • 雑誌名

      PLoS one

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Human gain-of-function STAT1 mutation disturbs IL-18 immunity in mice2020

    • 著者名/発表者名
      Tamaura M, Satoh-Takayama N, Tsumura M, Sasaki T, Goda S, Kageyama T, Hayakawa S, Kimura S, Asano T, Nakayama M, Koseki H, Ohara O, Okada S, Ohno H, Kobayashi M
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 32 ページ: 259-272

    • 査読あり
  • [学会発表] Successful Bone Marrow Transplantation Using an Immunomyelosuppressive Conditioning in Patients with Severe Congenital Neutropenia: The Results of a Single-Institute.2019

    • 著者名/発表者名
      Risa Matsumura, Shiho Nishimura, Yoko Mizoguchi, Mizuka Miki, Maki Taniguchi,Maiko Shimomura, Shuhei Karakawa, Shinji Mochizuki, Takehiko Doi,Hiroshi Kawaguchi, and Masao Kobayashi
    • 学会等名
      The 61st Annual Meeting and Exposition of American Society of Hematology
    • 国際学会
  • [図書] 新臨床内科学2020

    • 著者名/発表者名
      小林正夫(一部執筆):先天性好中球減少症,周期性好中球減少症
    • 総ページ数
      1817-1819
    • 出版者
      医学書院

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公開日: 2021-01-27  

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