研究課題
先天形態異常症候群に対して家系ゲノム解析を行っても、既知症候群として診断可能な症例は現状で全体の3割程度にとどまっている。残りは極めてまれ、ないし未知の症候群と考えられる。残り7割の診断には、「臨床医の眼」による正確な症状記述の積み重ねにより、過去の症例から一群とすべき症例を見きわめることが必須である。もし、多くの医療従事者がこの「臨床医の眼」を共有できれば、先天形態異常症候群の診断精度を大きく高められる。本家研究が目指すのは医療従事者のための情報共有学習システムである。一方、本研究と平行して、海外では大規模な顔貌画像および診断結果データに基づく機械学習を応用した先天性形態異常症候群診断補助システムの性能が急速に向上していることが報告されてきている。こうしたシステムの一つがFace2Gene (https://www.face2gene.com/ )である。しかし、このシステムの学習の多くがヨーロッパ系集団の情報を用いて実施されてきていることから、はたしてFace2Geneが本邦の症例に対しても性能を発揮するのかどうかは不明であった。このため、代表研究者は本研究のために準備をすすめてきた本邦症例のデータを用いることでFace2Geneの性能評価を試みた。75名・48症候群を持つ患者群、およびダウン症候群をもつ患者群それぞれについて、上位10位の候補症候群に正しい診断が含まれるかを評価したところ、高い感度をすでにもつことが明らかになり、またダウン症候群をもつ患者群33名では年齢による影響も限定的であることも明らかになった。この結果については論文を現在投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
対象症例については100例以上について顔貌画像および臨床診断情報をとりまとめることができている。さらに追加症例についての解析準備を進めている。Face2Geneの本邦症例を用いた性能評価については前述のとおり現在論文を投稿中である。情報のアノテーションのためのヒト表現型オントロジー(HPO)の利用については、とくに手分けしたアノテーションのためにはその日本語化が重要である。代表研究者はAMED-GA4GH GEM Japanワークショップへの参加を通して情報収集を行った。
Face2Geneの性能評価の結果、高品質顔貌画像があるにもかかわらず診断できない症候群があることが明らかになった。これらの症候群の検出感度改善のためには本邦症例の登録が必要であると思われる。また、本研究のためのデータセットに対するアノテーションと特徴値抽出システムの実装を試みる。
本年度はシステムの実装に先立ち、本研究のためのデータを用いた海外システムFace2Geneの評価を先行させたため次年度使用額が生じた。次年度は、システムの実装をすすめ、必要となる機器の購入を行う予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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