研究課題/領域番号 |
18K07851
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
入江 理恵 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90381178)
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研究分担者 |
小戝 健一郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (90258418)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 脳・神経疾患 / 細胞・組織 / 生理活性 / 解剖学 / 超微形態学 / mecp2 |
研究実績の概要 |
予備実験により得られている雄のmecp2遺伝子欠損マウス(mecp2-/y)で見られた某生理活性物質産生の生体内変化を、in vitroで再現した。具体的には、shRNA-mecp2を搭載したレンチウィルスベクター感染によるRNAi法により候補組織の培養細胞においてmecp2遺伝子ノックダウンを行い、細胞分取によりmecp2遺伝子ノックダウン細胞の純化、ライン化に成功し、生体で見られた現象を再現することを可能とした。現在このmecp2ノックダウン細胞でこの物質の生合成経路に関係する遺伝子群、あるいはそのプロモーター領域を中心に分子生物学的手法(定量PCR、Western blottingなど)にて確認中である。 さらに、上述の手法に加えmecp2遺伝子のレスキュー実験に着手し、内因性mecp2のノックアウトおよび外因性mecp2発現レンチベクター(mecp2遺伝子の置き換えベクター)を構築し、上記と同種の細胞に感染させ、ライン化した。今後、mecp2発現確認と、それに伴う上記生理活性物質の生合成経路に関する遺伝子群の発現変動を評価する予定である。さらに、in vitroの系で、mecp2ノックダウン細胞からTotal RNAを抽出し、マイクロアレイ解析(mRNAおよびmiRNA発現解析)とデータマイニングを行うための準備を進めている。また、ChIPシークエンスを実施し、Mecp2蛋白質とゲノ全体のDNA結合部位を同定することにより、Mecp2蛋白質の結合遺伝子を確定させ、対象細胞における産生物質合成経路の遺伝子制御ネットワークを解明するための計画・準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vivoで見られた現象をin vitroで再現する実験系を確立することに成功し、あとはmecp2とどの遺伝子がダイレクトに関係しているかを突き止める段階までくることができた。現在生理活性物質産生のパスウェイ上に存在する種々の遺伝子発現を定量PCRにて一つ一つしらみつぶしに解析している段階であるが、プライマーの設計や実験の再現性の安定に少し時間を要した。 また、本年度中には、最終年度に予定している真のRTTモデルであるmecp2遺伝子欠損雌マウス(mecp2/+)の作製と表現系・諸臓器形態を比較のための、動物の産生に着手する予定であった(動物産生自体が容易ではなく、非常に時間がかかるため)が、計画のみにとどまった。 神経系以外の組織での組織形成異常と、この原因とされる生理活性物質産生能の低下が関係していると推察され、RTTの神経系以外の器官での形態異常は未だ報告がほとんどないことから、独創性も研究価値も高いと確信しているが、上記理由のため海外論文投稿までは至っておらず、研究の進捗が遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の計画は、研究成果を国内外へ発信することである。そのためにはmecp2遺伝子をレスキュー(mecp2遺伝子をmecp2ノックダウン細胞またはRTTモデルマウスへ再導入)することにより、機能回復が認められるかを確認する予定である。本年度中に国際雑誌への論文投稿、国内学会での成果発表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) mecp2遺伝子の当該細胞への直接的関与を実証するための遺伝子ノックダウン試験ならびにmecp2遺伝子再導入による生理活性物質産生の機能回復の確認のために、長期的に継続して組織培養実験を行うため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 現在細胞分取によりライン化した細胞を使用するため、新規の細胞購入は不要であるが、培地や血清、ピペットやシャーレなどの一般的な培養器具が必要である。また、遺伝子発現確認のための逆転写酵素やPCR試薬および抗体など(免疫染色やウェスタンブロット用)、生理活性物質定量に係る解析費用に充てる。
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