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2019 年度 実施状況報告書

超早産児の認知機能障害及び神経発達症に関する新規モデルマウスを用いた病態の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K07855
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

出口 貴美子  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (50227542)

研究分担者 久保 健一郎  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (20348791)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード虚血性脳障害 / 細胞移動 / 子宮内胎児電気穿孔法 / フラッシュ・タグ法
研究実績の概要

我々が独自に開発した、虚血性脳障害モデルマウス(Kubo,Deguchi, et al., JCI Insight, 2017)を用いて、細胞移動の障害が生じる神経細胞の分子プロファイルの変化についての解析を進めた。実際には、マウス子宮内胎児電気穿孔法等を用いて、発達中のマウス胎仔脳の神経細胞に蛍光タンパク質を発現するプラスミドを導入することによって、あらかじめ神経細胞の可視化を行っておいた。生後の虚血性脳障害モデルマウスと対照群のマウスの脳から、蛍光タンパク質を用いてセルソーターによって移動中の神経細胞を抽出したのち、それらの細胞からRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行った。その結果、得られた候補分子について、実際に虚血性脳障害モデルマウスと対照群のマウスの脳で発現が変化しているか、検証を開始した。
また、これまでに確立したマウス子宮内電気穿孔法を用いた部位特異的神経細胞ラベル法に加えて、最近開発されたフラッシュ・タグ法を改変した新たな手法を用いて(Yoshinaga, et al., in preparation)、脳内の異なる領域の細胞移動を同時に可視化した。その結果について定量を含めた解析を進め、虚血性脳障害モデルマウスにおいて、これまでに注目していなかった大脳皮質の領域においても神経細胞移動の変化を見出した。また、その過程で、これまで一見均一に見えていた新皮質における細胞移動が、実は脳の領域によって、かなり違いが大きいことを見出した。また、この差が明瞭な時期と、さほど違いが明瞭でない時期があることも新たに明らかにした。このように、時期と領域による神経移動の違いについて、新規手法を用いて詳細に観察し、その結果をまとめて、論文として投稿するための準備を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

独自に開発した虚血性脳障害モデルマウスを用いて、移動の障害が生じる神経細胞を可視化することにより、特異的にそれらの神経細胞を抽出することに成功した。それらの細胞からRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行い、虚血性脳障害モデルマウスと対照群のマウスの脳で発現が変化する可能性のある、複数の候補分子を得ている。加えて、これまでに、最近開発されたフラッシュ・タグ法を改変した新たな手法を用いて、脳内の異なる領域の細胞移動を同時に可視化した結果、この虚血性脳障害モデルマウスにおいて、従来は注目していなかった領域においても神経細胞移動の変化を見出している。これらの、現在進行中の解析を進めることによって、今後当初の目的である虚血性脳障害モデルマウスにおいて機能が変化する神経細胞に生じる回路形成及び分子的変化を明らかにしていくことができると予想される。

今後の研究の推進方策

我々が独自に開発した虚血性脳障害モデルマウス(Kubo,Deguchi, et al., JCI Insight, 2017)に対し、これもまた独自に確立したマウス子宮内電気穿孔法を用いた部位特異的神経細胞ラベル法(Tomita*/Kubo*, et al., Hum.Mol. Genet., 2011、Ishii*/Kubo*, et al., J. Neurosci., 2015)を用いて蛍光タンパク質を移動中の神経細胞に導入し、その後に虚血を誘導することで移動中の神経細胞を可視化する。これら蛍光タンパク質によってラベルされた細胞を中心に様々な脳領域における細胞配置と回路形成の解析を行い、障害されやすい脳領域と神経回路を引き続き明らかにしていく。それに加えて、最近開発されたフラッシュ・タグ法を改変した新たな手法を併せて用いて、これまでの年度で明らかにした時期と脳領域による神経移動の違いを解析の土台にしながら、虚血性脳障害モデルマウスにおいて、障害されやすい脳領域と神経回路を明らかにする。また、蛍光タンパク質でラベルされた細胞をFACSで回収して、それらの細胞からRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行った。これにより、虚血性脳障害モデルマウスと対照群のマウスの脳で発現が変化する可能性のある、複数の候補分子を得ているため、その結果について進めている解析と検証を引き続き遂行して、虚血性脳障害モデルマウスにおいて機能が変化する神経細胞に生じる分子的変化を明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

消耗品や実験材料の効率的な使用が可能であったため。引き続き、消耗品や実験材料の効率的な使用を行いながら、次年度の研究計画目標を達成する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Increased densities of white matter neurons as a cross‐disease feature of neuropsychiatric disorders2020

    • 著者名/発表者名
      Kubo Ken‐ichiro
    • 雑誌名

      Psychiatry and Clinical Neurosciences

      巻: 74 ページ: 166~175

    • DOI

      10.1111/pcn.12962

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Extremely preterm infants with brain injury leads to cognitive dysfunction due to neuronal brain network damage2019

    • 著者名/発表者名
      Kimiko Deguchi, Ken-ichiro Kubo, Kazunori Nakajima, Ken Inoue
    • 学会等名
      15th Asian and Oceanian Congress of Child Neurology (AOCCN) & 41st Malaysian Paediatric Association Annual Congress 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] 神経細胞移動の障害が超早産児の認知機能低下に関与する可能性についての検討2019

    • 著者名/発表者名
      久保 健一郎,出口 貴美子,井上 健,仲嶋 一範
    • 学会等名
      第24回認知神経科学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳の細胞構築に注目して精神疾患の病態を理解する試みについて2019

    • 著者名/発表者名
      久保 健一郎,出口 貴美子,井上 健,仲嶋 一範
    • 学会等名
      第115回 日本精神神経学会学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] New aspects of extremely preterm infants with brain injury2019

    • 著者名/発表者名
      Kimiko Deguchi, Ken-ichiro Kubo, Kazunori Nakajima, Ken Inoue
    • 学会等名
      The 20th Annual Meeting of Infantile Seizure Society
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 超早産児脳の最近の知見 ─NICUのその後をどう育むか?─ 在胎20-28週のヒト脳の脆弱性2019

    • 著者名/発表者名
      出口 貴美子、久保 健一郎、井上 健、仲嶋 一範
    • 学会等名
      第4回小児ニューロリハビリテーション研究会・第4回超早産児神経発達症研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 超早産児虚血モデルマウスの開発と応用2019

    • 著者名/発表者名
      久保 健一郎,出口 貴美子,井上 健,仲嶋 一範
    • 学会等名
      第4回小児ニューロリハビリテーション研究会・第4回超早産児神経発達症研究会
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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