研究課題
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、ステロイド抵抗性・難治性ネフローゼ症候群を呈しながら末期腎不全に進行し、さらに、腎移植後、高率に再発して移植腎機能廃絶に至る希少難病である。FSGSの腎移植後再発は移植腎の生着を妨げる重大な要因であり、国際的な最重要課題である。腎移植後再発を予測する因子として、前回腎移植時に再発したことと遺伝子変異がないことがあげられているが、それ以外の因子は確立していない。その理由の一つとして、これまでの再発予測因子研究の多くでは遺伝子解析を含めたFSGSの病因分類が十分なされていなかったことが考えられる。そこで本研究では、次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を施行したうえで、再発予測因子を解析した。国内の7施設で2002年から2018年に腎移植を施行された1歳から25歳までに発症したFSGS患者63名を対象とした。二次移植例は除外した。また、FSGSの病因分類を行い、二次性FSGS(低形成腎、肥満、高血圧性など)例、家族性または腎外症候を有するFSGS例、エクソーム解析等で遺伝性FSGSと診断された例を除外した。また、発症時にステロイドを使用されなかった例も除外した。その結果、36名が解析対象となった。うち22名(61%)が腎移植後再発した。既報のリスク因子は再発と関連しなかったが、初回ステロイド治療または追加治療(免疫抑制薬または血漿交換またはLDL吸着療法)で完全寛解または部分寛解した症例の割合は再発群(22名中19名、86%)が非再発群(14名中6名、43%)より有意に多かった(p=0.01)(論文投稿中)。二次性FSGS、家族性または腎外症候を有するFSGS、遺伝性FSGSを除外した患者群において、初回ステロイド治療またはその後の免疫抑制治療、血漿交換、LDL吸着に対する治療反応性がFSGSの腎移植後再発の予測因子となりうることが示された。
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