今年度は、研究1「Nav1.5発現細胞を用い変異によるNa電流の変化を検討」の実施のため、Nav1.5野生型及び変異を恒常的に発現する哺乳類細胞株の作製を続行した。これまでに野生型(成人型、新生児型)のSCN5A遺伝子にそれぞれc.4868G>A (R1623Q)変異を導入した哺乳類発現ベクター計4種類を作製できた。これらの発現プラスミドをそれぞれ293T細胞に導入し、ハイグロマイシン選択により、Nav1.5成人型3クローン、Nav1.5成人型-R1623Q変異 3クローン、Nav1.5新生児型-R1623Q変異 3クローンを作製できた。Nav1.5新生児型クローンの作製が遅れていたが、これも作製できたので、本年度パッチクランプ実験の実施に至り、これら4種類のNav1.5のクローンの電流波形を測定できた。 研究2の「疾患iPS細胞分化心筋細胞を用いた機能解析」に関しては、昨年度までに当該研究室に凍結保存されていた不死化B細胞株を用いて、R1623Q変異をもつLQT3患者2名のiPS細胞を作製することができた。今年度は、iPS細胞から心筋細胞への分化誘導法に、心筋の小塊を形成する手法を加えたところ、心ナトリウムチャネルや心筋を構成するトロポニン2などの心筋特異的な遺伝子群の発現が改善した。現在、これらのiPS-心筋細胞(2次元分化型と途中心筋塊型)について、MED64システムを用いて電気生理学的なデータを蓄積している。
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