研究課題
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)では、骨格筋にある筋衛星細胞の分裂が抑制され、筋前駆細胞の産生障害がある。ジストロフィンDp71(Dp71)は、細胞分裂を抑制する新しい分子として近年大きく注目されている。しかし、Dp71は骨格筋には発現しないとされ、衛星細胞の分裂制御とDp71との関連は未解明である。申請者は、つい最近Dp71が骨格筋でも発現していることを世界に先駆けて明らかにした。このことは、骨格筋における唯一の分裂細胞である衛星細胞にDp71が発現していることを強く示唆した。本研究は、衛星細胞の核にDp71が発現することを明らかにするとともに、その発現を阻害したり過剰発現させたりすることにより、Dp71が衛星細胞の分裂を制御することを明らかにするものである。よって、Dp71が衛星細胞の分裂制御因子であることを示す世界で初めての最先端研究である。初年度の研究において、ヒト衛星細胞のDp71の発現をmRNAとタンパクの2つのレベルで確認した。筋衛星細胞に唯一発現するDp71のアイソフォームが特有な機能を発揮することが示唆された。そこで、2年度はDp71とアイソフォームの特有な機能を明らかにするため、Dp71とそのアイソフォームを発現するプラスミドをそれぞれ作製した。作製したプラスミドをヒト筋芽細胞へ導入した。そして、導入した細胞で発現したDp71とアイソフォームのタンパクの細胞内分布に違いがあることを免疫染色で明らかにした。また、Dp71とアイソフォームを導した細胞の増殖を観察したところ、2の間で細胞増殖度に差があることが判明した。これは、Dp71とアイソフォームの間に細胞周期制御に違いがあることを示唆した。現在それぞれのタンパクの細胞周期への作用について解析中である。
2: おおむね順調に進展している
Dp71とそのアイソフォームが細胞において異なる機能に関与していることを想定して、Dp71とそのアイソフォームを発現するプラスミドを作成し、細胞に導入した。そして、導入した細胞で発現したそれぞれのタンパクの細胞内局在について解析した。2つのタンパクの間に細胞内局在に差があることが明らかとなった。この細胞内局在の差が機能と関係するかを明らかにするため、2つの導入細胞の増殖度を比較した。その結果、想定した通りに導入発現したDp71とアイソフォームの間に細胞増殖度に差があることを示す結果を得た。さらに、この増殖度の差が細胞周期の制御に差があると想定し、細胞周期を解析中である。この様に衛星細胞に発現するDp71のアイソフォームには特有な機能があることを明らかにしつつあり、研究計画は順調に進んでいる。
細胞周期の進行をリアルタイムで観察できる蛍光プローブのFucci発現系を応用して、Dp71とDp71アイソフォームの間に細胞周期制御に差があることを明らかにする。そして、最後にDp71アイソフォーム導入による筋芽細胞増殖を明らかにする予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Hum Genet
巻: 138 ページ: 771-785
10.1007/s00439-019-02036-2