研究課題/領域番号 |
18K07866
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所) |
研究代表者 |
山崎 美和 (若林美和) 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 骨発育疾患研究部門 (旧環境影響部門), 流動研究員 (50455549)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Pit1 / Pit2 |
研究実績の概要 |
骨格におけるリン(Pi)の多様な作用の一部は、細胞形質膜や基質小胞の膜上に存在するIII型ナトリウム‐リン酸共輸送担体であるPit1やPit2を介することが推察されるが、その詳細は不明である。そこで、本研究においては、マウス骨芽細胞系細胞株MC3T3-E1 Subclone4にCRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集を適用しPit1欠損細胞(Pit1-KO)およびPit2欠損細胞(Pit2-KO)を作製し、骨芽細胞におけるこれらの輸送体の機能の解析を試みた。Pit1-KO、Pit2-KO共にPi取り込み能は減弱していたが、3 mM Pi存在下で8週間培養した際の石灰化は保持されていた。1, 4, 7 mM Pi存在下で15分~24時間培養し、短期的なPi刺激に対する応答性を検討したところ、Pi刺激で惹起されるERK1/2のリン酸化、OsteopontinやDmp1の発現誘導はPit1-KO、Pit2-KOにおいてもコントロール細胞と同様に認められた。次に、Pit1やPit2の欠損がピロリン酸(PPi)代謝やATP代謝に及ぼす影響を検討した。1 mM Pi存在下の細胞内PPiはPit1-KO、Pit2-KOではコントロール細胞と比し減少しており、全ての細胞で7 mM Pi刺激により細胞内PPiが低下した。一方、細胞外PPiはPit1-KO、Pit2-KOで上昇していた。PPiを細胞外へ輸送する膜蛋白質であるAnkの発現も7 mM Pi刺激で有意に上昇した。細胞内ATPについては細胞間で明確な差を認めなかったが、細胞外ATPがPit1-KO、Pit2-KOではコントロール細胞と比較して有意に上昇していた。ATP受容体であるP2Y2の発現は、Pit1-KO、Pit2-KOでコントロール細胞と比較し有意に減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
III型ナトリウム‐リン酸共輸送担体をゲノム編集を利用しノックアウトした骨芽細胞株を樹立し、Pit1やPit2が骨芽細胞におけるPPi代謝やATP代謝の制御に関わる興味深い結果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
Pit1およびPit2は骨芽細胞におけるPPi代謝やATP代謝の制御に関わることが示唆され、今後は、この樹立したノックアウト細胞にウイルスベクターを用いて野生型Pit1, Pit2を発現させ表現型の回復を確認する。また、各ノックアウト細胞で他方の輸送体のノックダウンをウイルスベクターを用いてmiRNAを導入することにより行い、これらの解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じているがこれは前年度からの繰越金の一部であり、当該年度は予定通りの支出であった。次年度は論文投稿のための英文校正費や投稿費用が必要となり、次年度の請求助成金と合わせて使用する予定である。
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