研究課題/領域番号 |
18K07867
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 滋 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80516394)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 新生児糖尿病 / 単一遺伝子糖尿病 |
研究実績の概要 |
1.新規に3例の新生児糖尿病を集積し、分子遺伝学的検討を行った。 1例にメチル化感受性MLPA法の結果から、父由来アレルと考えられる染色体6q24 triplicationを同定した。染色体6q24の父性発現インプリンティング遺伝子の過剰発現が新生児一過性糖尿病の原因となるが、そのコピー数異常として6q24 duplicationとして報告されている。今回と同定した染色体6q24のみに限局したtriplicationの報告はなく、今後症例の表現型解析を行い、6q24 duplication例との差異を検討していく。他の2例については、6q24に加え、主要な原因遺伝子であるKCNJ11、ABCC8、INSには変異が同定されなかった。今後、網羅的遺伝子解析を行っていく。 2.原因不明の新生児糖尿病症例についての網羅的遺伝子解析 既知責任遺伝子を含むインスリン分泌機構に関わる68遺伝子を搭載した遺伝子パネルを用いて、次世代シーケンサーを用いたターゲットリシーケンスを19例について施行した。その結果、2例に既知遺伝子であるABCC8およびINSに変異を同定した。ABCC8に認められた変異は病原性と報告されていたが、INSについては新規変異であり今後病原性についての検討を要する。病的変異が同定されなかった17例については、さらに新たな65遺伝子の候補遺伝子を搭載したパネルを用いた解析を予定している。 3.新生児糖尿病長期フォローアップデータの解析 新生児糖尿病の主たる原因であるKCNJ11遺伝子変異に対する特異的治療であるスルホニルウレア薬の長期使用例におけるその効果を検討した。小児期は少量投与で良好なコントロールが得られるものの、思春期には悪化しうること、その悪化に対し増量が有効であることを報告した(Diabetologia, in press)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新生児糖尿病臨床診断基準の作成に関し、対照となる一過性高血糖患者の症例数が不十分であり、症例を蓄積中である。 新生児糖尿病の予後調査について、フォロー状況の確認に時間を要している。
|
今後の研究の推進方策 |
原因不明症例に対し、既知責任遺伝子を含む68遺伝子を搭載したパネルおよび膵β細胞機能に関わる65遺伝子を搭載した2つのパネルを用いて、targeted next generation sequencingを行う。 網羅的パネル解析で遺伝学的に新生児糖尿病と確定した症例と、それ以外の未熟児における一過性高血糖について、血糖コントロールマーカーやC-ペプチド、インスリン値、発症時期を検討し、両者を鑑別するカットオフ値の設定を行う。 これまで解析を行った症例の予後調査を行い、原因遺伝子毎の臨床像を明らかにし診断、治療指針を提案する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサー解析が遂行途中であるため。今後、DNAライブラリー作成および増幅、搭載するチップおよび稼働にそれぞれの試薬類に使用していく。
|