研究実績の概要 |
小児1型糖尿病患児の末梢血ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)濃度が膵ベータ細胞の障害程度を反映しているかどうかを確かめるために1型糖尿病患児(n = 20)における血中DPP4、C-ペプチド(CPR)、グリコアルブミン(GA)、抗GAD抗体、抗IA-2抗体、HbA1c、GLP-1活性を測定した。 対象の年齢は11.3±2.6歳、男8名、女12名。血中DPP4濃度は、Human DPP4/CD26 Assay Kit-IBLで酵素蛋白量を、血中GLP-1活性は、GLP-1 Active form Assay Kit-IBL(DPP4阻害剤添加血液)で測定した。DPP4濃度は660.2±171.5ng/ml、GLP-1活性 16.5±24.5pmol/L、HbA1c 8.0±1.1%。同じ測定法によるDPP4の健康成人での正常値が200-600ng/mlと報告されており、小児1型糖尿病児のDPP4は高値であった。DPP4とHbA1cとの間に有意差はないものの負の相関が認められた。 血中CPR陰性群(CPR 0.1ng/ml未満、n = 13)では、CPR分泌能維持群(n = 7)に比べてDPP4が有意に高値であった(733.8±144.7 vs 523.7±133.6, p<0.01)。より高いDPP4によってインスリン分泌を刺激するインクレチン活性が抑制されている可能性が示唆されたが、2群間でGLP-1活性に差は認められなかった。DPP4と年齢、BMI、GA、抗GAD抗体価、抗IA-2抗体、GLP-1活性との間には有意な関連は認められなかった。1型糖尿病では血中DPP4が高く、DPP4が高いほどインスリン分泌能が低くなっていることが推測され、DPP4が膵β細胞障害性T細胞の活動性を反映する指標となり得ると考えられた。
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