研究課題/領域番号 |
18K07874
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
合井 久美子 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (70324192)
|
研究分担者 |
大城 浩子 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (50377537)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | NK細胞 / 小児難治性固形腫瘍 |
研究実績の概要 |
進行期の横紋筋肉腫、悪性ラブドイド腫瘍などの難治性小児がんの予後は集学的治療の進歩にもかかわらず極めて不良である。近年、腫瘍微小環境における腫瘍の免疫寛容機構の解析から、TGF-βがNK細胞に対して、免疫抑制的に働くことが報告されており、その阻害はNK細胞による抗腫瘍活性の増強を期待しうるが、これらの腫瘍に対するTGF-β阻害の影響は明らかでない。今回、我々は同種血液幹細胞移植後のNK細胞の抗腫瘍活性の増強による小児難治性固形腫瘍の治療成績の向上を目的として、小児難治性腫瘍、特に横紋筋肉腫、悪性ラブドイド腫瘍に対するTGF-β経路の阻害による末梢血および臍帯血同種NK細胞の抗腫瘍効果および腫瘍への直接の影響について検討した。 2年度である平成31年度(令和元年)には保存さい帯血から分離増幅した臍帯血NK細胞を用いて、小児難治性固形腫瘍細胞株に対し細胞傷害活性の実験を行った。初年度に細胞培養液上清のTGF-βの測定を行い、TGF-β1阻害剤による短期的な影響のないことを確認した横紋筋肉腫2株と悪性ラブドイド腫瘍の1株、未分化肉腫の1株の細胞に対して細胞傷害活性を測定した。いずれの細胞株に対しても臍帯血NK細胞上の活性化マーカーであるCD107aの発現が増強した。細胞傷害活性も、放射能検査法であったクロム取り込み法に代わって、蛍光色素であるCalceinの取り込み法に変更し測定したところ、いずれの細胞株でも細胞傷害活性が確認され、1細胞株ではKIRL(HLA-C)不一致ドナーによる細胞傷害活性の増強も確認された。しかし、短期的なTGF-β1阻害剤の細胞株への添加では、さい帯血NK細胞による細胞傷害活性の増強は認められていなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究のベースとなる小児難治性腫瘍細胞のTGF-βの産生および腫瘍細胞に対するTGF-βR阻害剤の短期直接的な影響、細胞傷害活性実験に使用するドナーNK細胞の調整すなわち保存臍帯血からのNK細胞の分離、増幅に関しても終了し、in vitroにおけるTGF-β経路阻害による腫瘍細胞に対する同種NK細胞の抗腫瘍活性への影響に関しての実験も順調に進んでいる。しかしながら、TGF-βR阻害剤の影響が現段階では殆ど認められておらず、今後は、他のNK細胞細胞活性に影響する考えられる免疫調整剤でもあるlenalidomideなども含めた実験を行う予定である。そのため、当初の計画からはやや遅れており、in vivoの実験はこれらの系で細胞傷害活性の効果が高く期待できるNK細胞および薬剤が同定でき次第行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
長期的なTGF-β経路の阻害によるナーNK細胞による抗腫瘍活性の増強効果をin vitroで検討する。また、近年ADCC活性の増強が報告されている免疫調節薬lenalidomideによる抗腫瘍効果、NK細胞受容体リガンドに対する影響も検討中である。各々の腫瘍特異的抗体を用いたADCC活性に関しては、TGF-βR inhibitor、lenalidomideの併用による抗腫瘍効果の増強の有無についても検討する。 上記の実験で細胞傷害活性の効果が高く期待できるNK細胞および薬剤を用いて、NOD/SCIDマウスを用いた腫瘍細胞およびドナーNK細胞の移植実験を行い、invivoでのNK細胞による細胞傷害活性を検討する。さらに、末梢血NK細胞と臍帯血NK細胞との細胞傷害活性の差異について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
サイトカイン、抗体、分離カラムなどの試薬等を用いて行う同種NK細胞分離、増幅を必要とする細胞傷害活性の実験の一部が次年度に持ち越されているため、次年度の使用額が生じている。
|