研究課題/領域番号 |
18K07878
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉栖 正生 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (20282626)
|
研究分担者 |
小久保 博樹 広島大学, 医系科学研究科(医), 講師 (10270480)
高橋 啓 東邦大学, 医学部, 教授 (80216712)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 血管炎 / TNF受容体スーパーファミリー / オステオプロテゲリン / 菌体抽出物 |
研究実績の概要 |
川崎病は冠動脈などの中小動脈に血管炎が生じる疾患である。現在、大量免疫グロブリン療法による治療が確立されているが、3-5%程度の患者に冠動脈瘤が形成されることが知られている。以前、我々はマウス腹部大動脈瘤モデルにおいて、TNFスーパーファミリーに属するTRAILが血管壁の組織破壊を誘導し、TNF受容体スーパーファミリーに属するオステオプロテゲリン(OPG)がそれに拮抗することを見出した。大動脈瘤と同様に血管壁の炎症・組織破壊を呈する川崎病におけるTRAIL、OPGの役割を解明し、冠動脈瘤形成を抑制する治療に関わる基礎的知見を得ることを目指して実験を開始した。 OPG(+/+)、OPG(-/-)マウスに対してカンジダ菌体抽出物(CAWS)腹腔内複数回接種を行い、CAWS誘導性血管炎モデルを作成し、冠動脈における血管炎の発生率・重症度の差を評価した。結果、両遺伝子型間における明確な血管炎の発生率・重症度の差は見出されなかった。我々は当初OPG欠損により血管炎が重症化することを予想し、両遺伝子型間の重症度の差異を明確にすることを念頭に、原法より少量のCAWSでモデル作製を行っていた。前述のように少量のCAWS接種では血管炎の発症率などに差が見られなかった為、原法通りの投与量で再度モデル作製を行い、血管炎の重症度の変化を観察しようと試みた。 興味深いことに原法通りにCAWSを投与したところ、OPG(-/-)マウスでは投与後1-2日以内の死亡が多数見られた。少数例の検討であるが、CAWS投与後の肝臓から組織切片を作成し観察したところ、OPG(-/-)マウスでは肝細胞の膨化変性様の組織変化が見られた。現在、追加実験を行うとともに、肝臓以外の臓器の解析も進めている。以上の結果から、OPGが川崎病急性期に生じる肝機能障害等の血管炎以外の臓器障害に関連している可能性が示唆されつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における動物実験の主要なアウトカムと考えていた血管炎の発生率・重症度において想定通りの結果が得られなかったため、区分としては「やや遅れている」とした。一方、投与後早期のマウス死亡や肝組織障害など、当初予想していなかった興味深い結果が得られつつあり、それに応じて研究計画を発展させ、更なる実験を進行している。従って全体としての研究進捗状況は比較的順調と考える。
|
今後の研究の推進方策 |
サンプルサイズを増やし、OPG欠損に伴うCAWS投与後早期の死亡、臓器障害の再現性を確保する。CAWS投与後早期の臓器障害を組織切片の観察、血中バイオマーカーの測定により定性的、定量的に評価する。さらに、臓器障害に関連すると考えられるサイトカインの発現を各臓器及び血中で測定し、臓器障害の機序の解明に取り組む。加えて、可能であればOPGの投与などによりCAWS投与後の死亡や臓器障害が回避できるかを検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者とのやりとりの中で、若干の齟齬が生じたものと思われる。今後、研究を発展させる中で使用していく。
|