研究課題/領域番号 |
18K07881
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
要藤 裕孝 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10404659)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒトパルボウイルスB19 / 伝染性紅斑 / ウイルスゲノム変異 / 宿主 / トランスフェクション / 持続感染 / 胎児水腫 / 慢性骨髄不全 |
研究実績の概要 |
ヒトパルボウイルスB19は伝染性紅斑の原因であるが、伝染性紅斑以外にも(先天性溶血性貧血における)無形性発作、(免疫不全における)慢性骨髄不全、(妊婦への感染による)胎児水腫などの血液疾患をはじめ、急性・慢性関節症、急性脳症、急性肝炎など、多彩な臨床像を呈することが知られている。 その感染宿主はヒト骨髄中の赤血球前駆細胞のみとされている。B19ウイルスの感染許容細胞が極めて限局的である一方で、B19ウイルスはゲノム変異が少ないとされるDNAウイルスにもかかわらず、RNAウイルスにも匹敵するほどの比較的高率の変異が生ずることが近年わかってきた。 特定の部位における変異と病態との間に関連性がないかを検討することが今回の研究の目的である。B19ウイルスはいまだにウイルス培養系が確立していないため、ゲノム変異のあるウイルスの転写や翻訳に関しては、工夫が必要となる。臨床症状が通常の経過と異なる症例のウイルスゲノムをプラスミドに導入して、in vitroにてRNAの転写の時間的経過や構造タンパク領域と調節タンパク領域の割合(比率)が通常の株とどのように相違があるかを分析することが最終的な目標である。 今年度は、まずヒトパルボウイルスB19の標準的なゲノムを含むプラスミドpC1B19を使用する。このプラスミドはSV40 oriを持ち、COS7細胞に感染させるとゲノム複製、転写物作製、タンパク発現を生じさせることができる。それぞれ変異のある株の塩基配列を導入することより実験を開始することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトパルボウイルスB19の標準的なゲノムを含むプラスミドpC1B19を使用するが、このプラスミドはSV40 oriを持ち、COS7細胞に感染させるとゲノム複製、転写物作製、タンパク発現を生じさせることができる。それぞれ変異のある株の塩基配列を導入することより実験を開始することとした。Overlapping PCRを用いて、ゲノム変異を導入することにしたが、PCRによる増幅が不安定であり、現段階でゲノム変異の導入に難渋している。各変異が導入できた後に、pC1B19変異プラスミドをリポフェクタミンを用いてCOS7細胞にトランスフェクトする次の段階に入っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
pC1B19変異プラスミドをリポフェクタミンを用いてCOS7細胞にトランスフェクトする。その後、時間を追って(24時間後および48時間後、および時間的変化が顕著であればその間の時間にも)細胞を回収していき、RNAを抽出する(Qiagenのキットを使用)。Real time PCRによりNS1領域、VP1領域、VP2領域を各領域を区別できるプライマーを用いて定量する。調節タンパクNS-1をコードするmRNAはDonor1とAccepter1-1, 1-2の間でsplicingしないのに対して、構造タンパクVPをコードするmRNAは同部位にてsplicingするため、イントロン内と外にプライマーを設定することにより両mRNAを定量的に比較することが可能となる。この方法で症例ごとに転写物の時間的推移、量的な比較することが可能である。論文13ではRNA分析をRNase protection assayにて行っているが、Real-time PCRによっても、同様にRNAごとの定量が可能である。 この症例以外にも、特異的な経過をとった症例のゲノム変異をpC1B19プラスミドに導入して(Overlapping PCRを応用できないほど変異が多い場合は血清サンプルをPCRで増幅して制限酵素を用いてpC1B19に組み込んで)、同様にトランスフェクション、RNA抽出、Real-time PCRによる定量を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より実験に使用する費用がかからなかったため、予算を次年度使用に回しました。今後は、実験に使用するポリメラーゼ酵素などの試薬に予算が予定より多くなる可能性が高く、そこに次年度に回した予算を充当する計画です。
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