研究実績の概要 |
【研究目的】遺伝子治療を施行した遺伝子挿入変異による変化はウイルスベクターを用いる場合、原因遺伝子にベクターゲノムが挿入され、持続的に遺伝子発現することによる酵素補充効果が期待されているが、このことによる二次的な遺伝子変化の詳細はわかっていない。今回Fabry病(ライソゾーム病に分類され、糖脂質蓄積により心肥大、腎不全など発症する単一遺伝子病)患者から採血し次世代シークエンサー(Next Generation Sequencer, NGS)にて原因遺伝子以外の遺伝子異常を網羅的に確認し、更に各患者の採血時点での臨床データ(画像検査など)を含めてこれらを人工知能(AI)に深層学習させ、データマイニングにより解析し、近い将来に遺伝子治療を施行した場合の遺伝子変異の変化を同じ集団で調査し、ウイルスベクターの影響を調査する基礎資料とする。更に、病原遺伝子以外のゲノム・遺伝子環境の確認、各患者における臨床情報との相関性、AIによる統合的診断アルゴリズム・データベースの構築、酵素補充・遺伝子治療などの治療介入による詳細な変化把握を目標とした。 【方法】Fabry病患者男性23名、正常男性5名、計28名の血液よりRNA抽出しこれをCAGE解析(株式会社ダナフォームへのNGS外注)。解析結果をFabry病で心臓合併所見の有る群・無い群・正常群の3群に分類。 【結果】3群間で有意差検定し候補遺伝子10個選出した。この10遺伝子の発現量に関して正常群を除いたFabry病23名の心MRIをAIコンピュータにより解析し(Segmentation)、Fabry病で心合併所見の有・無の2群間で差が出る遺伝子を2つ検出したが、散布図からは逆相関の発現傾向が見られた。現在この2遺伝子発現の組み合わせでFabry病の心合併症の予後予測が可能かどうかを統計学的処理により検証している。
|