研究実績の概要 |
研究1(発現分布):2020年度は、c-FOSの発現をウサギ及びラットの胎仔・新生仔の動脈管・肺動脈における分布を免疫染色できた。いずれの種でも新生仔動脈管の中膜細胞の核にc-FOSの発現は顕著であった。 研究2(パスウェイ遺伝子解析):ウサギ動脈管のRNA-seqの結果から、酸素感受性シグナル伝達パスウェイに関係する遺伝子をこれまでに複数推定した。2020年度は、定量PCR法を用いてウサギ未熟胎仔動脈管・肺動脈、高酸素・低酸素・大気に30分間曝露した成熟胎仔動脈管・肺動脈のmRNAについて、これらの候補遺伝子の発現を検討した。対照である肺動脈に比べて動脈管で比較的発現が高く、高酸素(及び/又は)大気曝露により、動脈管で発現レベルが増加する遺伝子や逆に低下する遺伝子を検出できた。 研究3(転写因子複合体の同定):2020年度は、ウサギTFAP2B遺伝子の転写物バリアントの一つをクローニングすることができた。TFAP2Bはバリアントが多様で、ウサギでは11, ヒトでは4バリアントが予想されている。これまでにウサギ動脈管の成熟期(満期胎仔期)に発現する転写バリアントに特異性があることを示唆する結果を得た。成熟胎仔動脈管に発現するバリアントが、酸素感受性や動脈管の成熟に寄与する可能性が考えられることから、この時期の動脈管に発現するバリアントの特徴付けの研究を進めている。転写因子複合体の同定のための次の段階として、哺乳類細胞でのc-FOSやTFAP2Bの発現・精製の実験に移った。発現レベルや細胞内局在を検討するためにGFPタグをつけて、293T細胞に発現させたところ、c-FOSやTFAP2Bは予想通り細胞核に発現したが、発現量レベルは低く、転写因子複合体の同定の実験に用いるには、発現レベルの向上を検討する必要があることがわかった。
|